コロナの来たる第二波に備えて、国と自治体の成果を検証する必要がある。政治経済評論家の八幡和郎氏に、小池百合子東京都知事と吉村洋文府知事の言動をさまざまな視点から振り返ってもらった。

※本記事は、八幡和郎著『日本人がコロナ戦争の勝者となる条件』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

安易な採点ごっこは現場の士気を下げる

新型コロナ対策で「政府の動きが緩慢だ」「東京、大阪、北海道の知事こそ首相にしたい」「ほかの知事は何をしているのか」といった声が、マスコミにはあふれています。

しかし国と地方の関係についての無理解も目立ちますし、パフォーマンスばかり評価して、地道な仕事を軽視し現場を混乱させ、地方自治体の士気を下げかねない意見も散見されています。

特にどうかと思ったのは『文春オンライン』の記事「政治学者・御厨貴『知事たちの通信簿』」で、「北海道鈴木・愛知大村は○、宮城△、石川・千葉・神奈川×、小池都政は?  東日本編」「大阪吉村・和歌山仁坂・鳥取平井は○、広島△、兵庫・福岡は×……西日本編」というものです。

これはパフォーマンス偏重で、国に反抗的な姿勢を見せれば実質と関係なく良しとする「地方分権ごっこ」礼讃ですし、些細な失敗談ひとつで罰点というのもよくありません。

新型インフルエンザ等対策特別措置法では、疫病対策の前面に立つのは都道府県で、国は都道府県知事に方針を示し、知事が具体的な計画を立てます。

また医療体制は、都道府県によって事情が違うので、全国一律の方針は適当ではありません。「どうしたらPCR検査を増やせるか」とか「専用の外来をどこに設けるか」とかは、都道府県の実情に応じて考えるしかないのです。

都道府県庁には「保健福祉部」といった名の部局があって、部長が医官だったり、別に部長クラスの医官がいます。各県に最低ひとつの医学部があり、県内の何カ所かに保健所があります。

保健所はニーズの変化で縮小されています。批判もありますが、組織はそれなりの日常業務がないと人を抱えられないですし、日ごろ暇な組織が非常時に能率よく動くはずもないですから簡単に論じられません。

開業医主体の医師会はどこでも強力ですが、力のあるリーダーがいるとは限らないのが常です。隣県との協力関係もさまざまであり、財源にも大きな差があります。