新型コロナウイルスが世間を騒がせているなかで、注目を集めているのが「免疫力」。自分の免疫力を高めて、ウイルスがもたらす病気にかからないカラダをつくることが大事です。私たちの心身の健康と若さを左右している腸。星子クリニック院長の星子直美医師によると、食べ物で腸の働きはまったく違ったものになるといいます。

※本記事は、星子尚美:著『腸のことだけ考える』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

カラダに取り込まれた「酸素」が老化をもたらす

私たちにとって老化は避けられない現象ですが、そのスピードには個人差があります。それはおそらく、みなさんも身のまわりの人たちを観察するなどして、なんとなく実感しているのではないでしょうか。

私たちの心身の健康と若さを左右しているのは腸です。

腸内環境の良し悪しが、私たちの老化の速度を決めると言っても過言ではありません。がんや糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病も、認知症やうつ病、アレルギー疾患なども、腸内環境に大きく左右されるのです。腸がきれいで、健康だと、それらをはじめとするさまざまな病気を遠ざけ、心もカラダもそしてお肌も健康で若々しくいられます。

逆に腸が汚れていて不健康であれば、便秘が続き、腸内細菌も悪玉に偏ってバランスを失います。その結果、さまざまな病気を招いて全身の健康状態が悪くなり、心身ともに衰え、老化が進みます。

私たちの健康と若さと美しさを阻害するものの代表選手が、腸内で発生する「活性酸素」です。

私たちの生命維持に不可欠な酸素分子は、呼吸によって体内に取り込まれると、その一部が活性酸素に変化します。活性酸素は電子が欠けて不安定な状態にあるため、安定を求めて他の物質の電子を奪おうとします。

この電子を奪うという行為によって起こる現象が「酸化」です。

活性酸素によって電子を奪われた物質は「酸化する=サビる」つまりダメージを負ってしまいます。それが老化の原因であり、活性酸素によってカラダの組織や細胞がサビてしまうわけです。

活性酸素は細胞伝達物質や免疫機能として働き、殺菌などで活躍することもあります。

しかし、一方で過剰に生み出されると臓器、血管、細胞とヒトのカラダのあらゆるものを酸化させ、傷つけ、劣化させて老化を促進します。また、がんや心血管疾患、生活習慣病などのさまざまな病気の原因にもなります。

▲カラダに取り込まれた酸素が老化をもたらす イメージ:PIXTA

活性酸素の約90%は腸内の悪玉菌から発生

活性酸素は生活習慣病のほとんどの原因、あるいは要因と言われ、日焼けからがん、その他の生活習慣病まで、さまざまなトラブルや病気を引き起こすことがわかってきました。そのため活性酸素の害からいかに身を守るかが、病気を防ぎ、健康を維持・向上させるための、あるいは美容のための大きなポイントだと言えます。

しかし活性酸素は、酸素のあるところには必ず自然発生するものなので「発生」そのものを防ぐことは不可能です。

ヒトは一日に約500グラムの酸素を呼吸によって体内に取り入れています。その酸素は、われわれが食べた食物(有機物)を体内で燃焼させ、エネルギーをつくるために消費されます。酸素そのものは私たちの生命維持に必要不可欠なものですから、それをカラダに取り入れるのはしかたありません。

呼吸によってカラダに取り入れられた酸素のうち、約2%が活性酸素になるとされています。2%と聞くと意外と少ない印象を受けるかもしれませんが、活性酸素が発生するのは60兆個あるとされるヒトの細胞においてですから、ミクロのレベルでは相当な量です。

そしてカラダのなかでも、特に腸で発生する活性酸素は最大の問題です。

腸は複雑かつ膨大な仕事を行う臓器です。エネルギー消費量が多い部位ほど酸素を使うので、その分やはり活性酸素も大量に発生してしまいます。栄養を吸収する際に活性酸素が発生することもあれば、外敵が侵入した際に免疫細胞が活性酸素を発生させて外敵を排除するケースもあります。

また、腸内の悪玉菌も活性酸素を大量に発生させます。体内で発生する活性酸素の約90%は腸内で悪玉菌がつくっていると言われています。 腸内で発生する活性酸素をどうするかは、全身の健康に関わる問題なのです。

▲活性酸素が増える原因  イメージ:PIXTA