今月アメリカで開催される党大会にも、新型コロナウイルスの影響が出てきた。トランプ大統領の評価が問われる2020年大統領選挙が間近に迫っている。元々良いイメージを持たれていなかった人物が、なぜ大統領の座に上り詰めることができたのか。国際政治学者である高橋和夫氏に、いまいちど振り返ってもらった。

※本記事は、高橋和夫:著『最終決戦 トランプvs民主党』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

トランプは多くの票を求めていない

2020年11月のアメリカ大統領選に出馬する候補者の姿が鮮明になってきた。共和党は、もちろん現職のドナルド・トランプ大統領である。

民主党は予備選挙が20年1月からスタートした。3月時点で残っていたのはジョー・バイデン前副大統領とバーニー・サンダース上院議員だったが、4月上旬にサンダース議員が離脱を表明した。民主党大会は8月に予定されており、ここで正式に民主党の大統領候補が指名される。しかしライバルのサンダースが離脱した段階で、バイデンの実質上の指名が決まった。

一般的には大統領選は、現職が圧倒的に有利とされる。お金をかけた選挙キャンペーンをしなくても、大統領は毎日の行動がすべてニュースになるからだ。第二次大戦後の大統領選で負けた現職は、1992年のブッシュ(父)ら3人だけで、現職の再選率は70%に及ぶ。その3人が敗れた要因には、経済の低迷や党内から再選を阻む批判が出たことなどであった。

では、トランプはどうか。再選は固いとの論調もあるが、世論調査の数字はそれほど盛り上がってはいない。2016年の当選時から現在まで、支持率はほぼ40%前後の横ばいだ。これまでの大統領が、オバマのような人気者では60%前後、そうでない場合でも50%程度の支持があったのと比べると、トランプの支持率は高いとは言えない。また、トランプを支持しないという人の割合が常に5割以上いるというのも、特異な傾向である。

それでも、トランプ陣営は再選に自信を持っている。支持率は大きく上がることはないが、どんな失言をしても35%を切ることもない。全体的には人気がないが、熱心に支持する固定ファンがついている。岩盤支持層と呼ばれるゆえんである。トランプは、初めから80%や90%の票をとろうとはしていない。

▲「トランプ不支持」層は投票率が低い傾向 イメージ:PIXTA