ブルーカラー層の評価がポイントになる

2016年の共和党予備選にトランプが出馬を発表したとき、多くのメディアはアウトサイダーの泡沫候補として扱った。世間では大金持ちの不動産屋、あるいはテレビ番組の司会者としては知られていたが、政界での実績はゼロだった。トランプではなくジョーカーだと揶揄された。

しかし突如現れたトランプは、共和党の有力候補を次々と破り、最終的には民主党の候補も破った。なぜトランプがそれほど人気になったのか。背景には、これまでの二大政党による政治への不信感がある。

近年のアメリカの世論調査では「政府を信用できるか?」という問いに対する肯定的な回答は、年々低下傾向にある。また、従来の政治家は腐敗しているという反発がある。

2015年11月のNBCニュースとウォールストリート・ジャーナル紙の共同調査では、69%のアメリカ人が、自国の政治システムは「ウォール街やワシントンの住人のように、金と権力を持ったインサイダーのためだけに機能しているように見える」と回答した。庶民の怒りが充満する中で登場したのが、従来の政治家とは異なるトランプだった。

私たちからすると、トランプも金まみれに見える。選挙に出馬するまで、トランプは共和党にも民主党にも多額の献金をしていた。大統領選で対決することになるヒラリー・クリントンにも、かつてはかなりの金額を寄付していた。不動産事業を円滑に進めるために、どちらの党が勝ってもうまくいくようにしていたわけだ。

トランプは出馬の際、有権者にこう呼びかけた。「俺に任せてくれ。俺がアメリカの政治をクリーンにする」と。「金をばらまいていた、お前がクリーンにできるのか?」と問われると「俺は大富豪だから企業に金で買われることはない。そして俺は金で人がどう動くか知っている。政治を立て直せるのは俺だけだ」と主張した。そしてトランプは大統領になった。

トランプがしっかりとつかんでいる支持勢力は、全米ライフル協会の会員やキリスト教原理主義者と呼ばれる人々、さらにはKKK(クー・クラックス・クラン)などの人種差別主義者たちだ。その支持は固い。

それに加えて、前回の選挙ではどちらの政党にも見捨てられたと感じていたラスト・ベルトなどのブルーカラー(労働者)が、アウトサイダーのトランプに希望を託した。トランプの勝利にはそれが大きく作用した。

しかし、今回の選挙でも、同じように支持を得られるかはわからない。トランプは「労働者の雇用を守る」と言い続けてきたが、彼の採った政策は二大政党の政策と何ら変わるものではない。大企業を優遇し、企業が儲かれば労働者への配分が多くなるという「トリクルダウン」の論理にのっとったものだ。

▲ブルーカラー層の評価がポイント イメージ:PIXTA

 ところが人々の暮らしは改善せず、2018年の中間選挙では、共和党のラスト・ベルトでの苦戦が目立った。この4年間のトランプの政策が、ブルーカラーの人たちからどう評価されるかが、大統領選の大きなポイントのひとつとなる。