再稼働と再生産は別物である

新華社は3月4日に、2月の中国製造部門PMIをもとに「指標は回復成長の望みあり」と題する、次のような分析を発表しています。

「2月の中国財新・マークイットの調査による製造PMIは40.1%。2004年に、この指標が発表されて以来、最低水準を記録し、2008年のリーマンショック時の40.9%よりも低い。数日前に国家統計局サービス業調査センターと、中国物流購買連合会が発表した2月の製造業PMIは、35.7%で前月よりも14.3ポイント下落している。非製造業商務活動指数は29.6%で、前月より24.5%下落。いずれも指標が発表されて以来、最低を記録した。民間シンクタンクのPMIも、国家の公式のPMIも新型コロナウイルスのマイナス影響を色濃く反映し、目下の中国経済はリーマンショック以上の危機に瀕している」

「今年の第一四半期の経済成長が減速することは間違いない。だが、この新型肺炎の影響は短期的であり、全体からみればコントロール可能だ。なぜそういえるか。政府の安定政策によって人民の基本的生活需要である農産物食品加工、食品、飲料などの製造業のPMIは42.0%以上、医薬製造業は39.7%以上であり、非製造業商務活動のうち金融は50.1%と比較的高い水準を維持し、新型肺炎の影響をさほど受けていない。……事実、このところ、中央の政策指示によって、企業の原材料購入や物資調達方面を巡る措置が多く打ち出され、企業・工場の従業員復帰、稼働再開が進んでいる。中国物流購入連合会の調査では2月25日までに大中型企業の従業員の職場復帰率は78.9%、うち製造企業は85.6%まで稼働を再開しており、生産経営活動は順調に回復している」

▲北京の新華社本社 出典:ウィキメディア・コモンズ

PMIがリーマンショック以上に下落しているのに、新華社は「経済回復は早い」とポジティブに報じているのですが、中国「財経」誌は、全体のサプライチェーンの回復速度は想像以上に遅く、たとえ工場に従業員が復帰し再稼働しても、再生産にはまだ時間が必要だとの見立てを報じています。

そして、その理由を「再稼働と再生産が別物であるからだ」としています。

例えば、深圳江並竜電子の工場では、従業員が7割戻ってきているが、さまざまな制限のなかで、生産効率の回復は平時の30%だとしています。多くの企業にとって目下の困難は、移動制限のなかでの従業員の職場復帰だが、1カ月後には、おそらく原材料や部品の調達困難が最大の問題となるだろうと言っています。

中国「財新ネット」が杭州市の道路工事作業員などに取材したところによれば、2月29日から中央から調査チームが派遣され、作業再開率を調査に来ていたそうです。

その指標が電力消費量。

2月29日午前零時時点で1月8日の電力使用量の75%、3月10日の時点で、1月8日の電力使用量の90%に達しているかが、企業が再開しているかいないかの指標で、この指標を満たしていることが各企業に要請されているのです。

このため、中央からの全国的な企業再稼働指示の要請に応えているふりをするために、一部企業は、一日中機械を動かしたり、空調やパソコンをつけたりして電力消費に勤しんでいるそうです。

▲浙江省義烏市の市街地 出典:ウィキメディア・コモンズ

浙江省義烏や温州は、ともに中小製造工場が集中する街ですが、同様の電力消費目標の通達が来ているといいます。ある企業関係者が証言したところによれば、企業は地元政府から「電力消費指標のために、すべての機器を稼働せよ」と強い圧力を受けたそうです。