親子関係に悩みを抱えている相談者が多い

ーー先生のもとにカウンセリングに来られる方は、どういった方が多いのですか?

年齢や性別、本当に様々ですが、人間関係に悩んでいる方が多いです。とくに多いのが親子関係に悩みを抱えている、いわゆる“毒親”に育てられた人たちです。養育者から関心を向けられてこなかった、兄弟と比較をされてきた、条件付きの承認しかされてこなかった。辛い経験を持っています。

▲親子関係に悩みを抱えている相談者が多い イメージ:PIXTA

条件付きの承認というのは、たとえば「親の役に立ったときだけ褒められる」という条件付きで存在を認められるものです。そうした環境で育ち大きくなって、友達・恋人・家族といった近しい人間関係でうまくいかなくなる。そしてウツなどを患ってしまって、カウンセリングに来られる方が多いです。

自分で自分を責めるような考え方も特徴的です。自分を守るための対処行動として、自他の心と身体を傷つけてしまうことも。周りも最初は「大丈夫?」と心配してくれますが、だんだん「重い」に変わってしまって、人間関係が悪化してしまう悪循環につながることも多いです。

そういった方に対して、認知行動療法とマインドフルネスのアプローチをとっていましたが、それに「思いやり」の要素を加えていきました。

ーーちなみにマインドフルネスとセルフ・コンパッションは、どう違うんでしょうか? それぞれ似た概念で重なる領域があるという捉え方でよいのでしょうか。

重なるというより、コインの表と裏のような関係でしょうか。お互いに切り離せないものです。マインドフルネスの基本原則は「いまこの瞬間に注意を向け、良し悪し判断せずに受け止める」というもの。ただ、人間はネガティビティバイアスがあるので、どうしても悪い方向に目を向けがち。

そこで意識的にポジティブな面を見ることで、やっと平等になるのかなと。また悪いところに目を向ければ痛みが出るもの。そのアフターケアとしてもセルフ・コンパッションの思いやりは有効です。ネガティブなものを直視するのは誰だってつらいですよね。だから、思いやりを伴わないとなかなか難しいのかなと思います。