2019年の電子出版市場は3000億円ほど、その中でもコミックスジャンルが約2600億円と大きな割合を占めています。[参考:全国出版協会・出版科学研究所]そして電子コミックでも人気なのがBL(ボーイズラブ)です。

言うまでもないことですが、リアル書店には書店員さんがいます。そして電子書店にも“顔が見えない”書店員さんがいます。なかなか実態が見えない電子書店の“中の人”に、この機会にアレコレ聞いてみようと思います。

今回は、丸善・ジュンク堂・文教堂などのリアル店舗、ネット通販と電子書籍が連動したハイブリッド型総合書店で、BLジャンルを担当されている、井上將利さんにインタビューしました。

▲ハイブリッド総合書店honto
※編集部より:今回のインタビューは「三密」を徹底的に避けて行いました。

売れているジャンル「BL」をさらに売ります

――インタビュー開始そうそうにすみません。BL好きな私としては、BL担当である井上さんには聞きたいことがありすぎて、どうしようかと悩みまくってました(笑)。まずはhontoさんの特徴・アピールポイントをお聞かせ下さい。

▲honto 井上さん

honto井上 あ! 何でも聞いてください(笑)。hontoは、大日本印刷グループの丸善・ジュンク堂書店・文教堂や、奈良県内に6店舗を展開する書店・啓林堂、静岡県を中心に店舗展開している戸田書店などのリアル店舗と、本の通販ストアに電子書籍ストアが連動したハイブリッド型総合書店です。

共通IDによりリアルとネットの利用情報を一元管理して、ポイントが貯まる・使える「hontoポイント」や購買・蔵書管理ができる「My本棚」、本の在庫検索など様々なサービスをチャネル横断的に展開しています。

――紙の本を買っても、電子書籍を買ってもポイントが貯まるというのが、まさにハイブリッドな感じですね。

honto井上 複数チャネルに入口があることから、さまざまなユーザーさんがいらっしゃいます。それと同時に、販売する商品においてもコミックだけでなく、小説にビジネス書や実用書、ボーイズラブにティーンズラブそしてアダルトまでと多岐にわたります。

そのため、現状はジャンル毎に担当が付く形となっていて、私はボーイズラブを主に担当しています。また、従来のhontoとは毛色を変えた、ジャンル特化型の売り場作りを目指し、この4月にBL専門フロア「すわんぷ」を立ち上げ、その運営も行っています。

――「すわんぷ」拝見させていただきました! BLジャンル特化型の専門売り場は珍しいですよね。

honto井上 そうですね。4月15日にオープンしたんですが、ちょうど1年前にプロジェクトがスタートしました。hontoは、いわゆる総合書店で「なんでもあります」みたいな書店っていう強みはあるんですけど、そのなかで近年、自分が担当しているBLは売上を伸ばしてるジャンルなんです。

そこをもっと伸ばすためには、既存のhonto側だけでは、ちょっと伸ばしきれないというか。hontoのレイアウトっていうのはシンプルで見やすいんですけども、作品であったりテーマごとの強弱とか、少し雑多な感じに見せたほうが、BLはおもしろいジャンルだったりするので。まったく別の切り口で作ろうというところから始まってますね。

あつまれ! BLアベンジャーズ⁉

――確かにhontoさんとは少し異なる感じのデザインになってますよね。ちなみに「すわんぷ」という名前の由来はなんでしょうか?

honto井上 名前の由来ですか? 英語で「沼」っていう意味なんです(笑)。

――あ、なるほどー! 「ナントカ沼」ってよく言いますもんね(笑)。

honto井上 いわゆるBL好きの方々に、よりズブズブとハマって頂きたいっていうところを目指して……。

――だからロゴが、ちょっと垂れてるんですね。

honto井上 滴ってる感じの……(笑)。サイトのUIとかにも気を使って、水面がユラユラするような作りにしてますね。チーム内で何度も話し合って、案を出し合って、でも最終的に決定打を打ったの自分じゃなかったんですよね、残念ながら(笑)。

沼ってキーワードは、けっこう早い段階で自分が出していたんです。沼というのをコンセプトとして、まずそういう意味合いのものを作りたかったんで。ただ「BL沼」とか、そういう言い方をしても直接的すぎるというか(笑)。

――そのサイト名を決める会議、めちゃくちゃ楽しそうですね。「すわんぷ」のチームは何人ぐらいなんでしょうか?

honto井上 電子書籍のジャンルを担当してるのが7人いるんです。自分はBLジャンルを担当していていますが、自分だけじゃ当然無理なので、別のジャンル担当からプロジェクトに関わっているのが2人。プラス「サイトを作る」というような構造なので、いわゆるUI周りのサービスをデザインするような部門からも参加してもらっています。会社内の各セクションから人間を集めてきた感じですね。

――アベンジャーズみたいな精鋭たちが集合した感じですね。皆さん「BLが好き」っていう人たちなんでしょうか?

honto井上 これはちょっとおもしろいんですけど(笑)。「BLが好き」だっていうのは、たぶん自分とジャンルを担当している人くらいで、集まった人が全員おっさんだったんですよね(笑)。

――すごいアベンジャーズですね(笑)。

honto井上 おっさんたちが集まって、会議とか10人ぐらいでこう〔ヱヴァンゲリヲンのキャラ・碇ゲンドウのような感じで、手を顔の前で交差する井上さん〕やってるんです(笑)。3か月ぐらいそれでやって、よく考えたら「おっさんだけで話していて、俺たちヤバくね?」みたいな(笑)。