ももクロの伝説をメンバーたちに背負わせる必要はない

アメフラっシに、あまり興味がない人たちにも訴求する記事を作るのであれば、ももクロが9年前に、この場所で作った伝説を掘り起こし「その延長線上に今回のライブがある」という内容にするのが、もっとも効果的なんだろうな、とも思ったが、そういった手法をとることはやめよう、と思った。

今年の夏は、あまりにもいつもの夏と状況が違う。9年前の夏も、まだ東日本大震災の陰が落ちてはいたが……なにか連動させるのは違うな、とも思ったし、ファンはもちろんのこと「メンバーにも、そういう側面を変に意識させてはいけない」という気持ちもあった。

そして、なによりも今のアメフラっシには、あえてドラマティックなサブストーリーで煽るようなブースターは必要ない。そんな勢いを6月と7月のライブで体感していたからこそ、なるべく「ありのままのアメフラっシ」をシンプルに見てもらいたい……いやでも「2020年の夏」ならではの、あれやこれやが開演前からついてまわるのだから、これ以上、余計な情報はいらないだろう。

もっとも、当日、極楽門の前に立っても、そんなにノスタルジックな気持ちにはならなかった。門の前に突っ立っていたら直射日光にやられてしまうし、我々が聞いていた時間よりも早くリハーサルが始まっているようで、すでに会場から彼女たちの歌声が聴こえてきている。9年前の思い出よりも、リアルタイムの現実を我々は優先しなくてはいけないのだ。

約半年ぶりとなる「有観客ライブ」。

だが、このタイミングで開催するには、さまざまなハードルをクリアしなくてはいけなかった。

まず新型コロナウイルス感染防止について、徹底的な対策を取る必要がある。絶対に欠かせない条件が、客席を「3密」状態にしないということ。そのために客席の半分以上を潰す。どの席に座っても、両隣は空席になるように配置されていた。

今までは、いかにして一枚でも多くのチケットを売るか、ということに誰もが注力してきたのに、まさか「いかにして客席の間隔を空けるか」ということに頭を悩ませる日が来ようとは……。

▲「3密」回避のため貼り紙をして半分以上の席を潰した(写真の中央後方も、撮影の映り込みを避けるため座れないスペースだ)