大人になっても「人見知り」で悩んでいませんか? もともと「人見知り」は子供のために用いられていた言葉でしたが、近年では大人に対しても用いられるようになってきました。精神科医の清水栄司氏によると、大人の人見知りは「人間関係の不安が強い状態」を指しているとしています。この春から新しい職場・部署に入る大人の人見知りさんたちへ、少し危険な克服法を教えます。

※本記事は、清水栄司:著『大人の人見知り』(ワニブックス刊)より、一部を抜粋編集したものです。

「人見知り」で悩んでいませんか? イメージ:PIXTA

苦手と思っていた場所に行ってみる

人見知り克服のための簡単な訓練法の一つが「暴露療法」です。自分でやる場合は、「自己暴露療法」といいます。暴露療法は「認知行動療法」の中でも特に有名な治療法なので、名前を見聞きされたことがある方も多いかもしれません。英語で言うと「エクスポージャー・セラピー(Exposure Therapy)」で、「エクスポージャー」とは「暴露」「身をさらす」といった意味です。

自分が恐怖・不安を感じている状況や場所、環境に対してあえて自ら足を踏み入れ、身をさらすことで、段階的に心身を慣れさせる治療法です。暴露療法はパニック症のような、不安症や恐怖症などで効果が認められています。

暴露療法という文字の仰々しさから、難しい治療法なのでは、と思われる方がいるかもしれませんが、行うことは単純です。あえて自分が苦手とする状況に段階的にチャレンジしてクリアしてゆき、少しずつ恐怖を取り除いて、病気を克服するのです。

苦手な場所や環境に自ら行ったり、自らの意思で苦手な行動をするので、初心者には恐怖心が伴うかとは思いますが、乗り越える実績を作ると非常に大きな自信につながります。とても高い治療効果があることが分かっていますので、無理のない範囲でチャレンジしてみてください。ただし、自分でうまくいかない場合は、精神科医のような専門家に相談しましょう。

知らない人に道を教えてもらう イメージ:PIXTA

知らない人に道を教えてもらう

暴露療法の基本的な考え方は、「不安に自分で立ち向かってゆこう」というものです。誰かに強制されるのではなく、自分の意思で行うことが重要です。

例えば、「知らない人に道を教えてもらう」というチャレンジがあります。これは「知らない人に自分から働きかけて、物事を尋ねる」という点が非常に大事であり、実際に「道を正確に教えてほしい」というわけではありません。本当は道を知っていてもいいので「あえて知らない人に話しかけてみる」という点に大きな意義があるのです。

「知らない人に声をかけて情報を聞き出す」というのは、誰にとっても多かれ少なかれ神経を使う行為です。人見知りの人は、とくに苦痛に感じる傾向があります。ところが人慣れするにつれ、苦しさやわずらわしさを感じなくなります。

他人に自分をさらす、つまり「暴露」し続けるうちに慣れ、人と接することにストレスを感じなくなってくるのです。