武蔵野の新卒の定着率が向上した理由とは?
2003年以降、武蔵野の新卒社員の定着率が劇的に向上しています。現在、入社3年以内の離職率は「3%」です。
新卒の定着率が向上した理由は、おもに「4つ」あります。
1.「採用に関する方針」を徹底する
経営計画書(会社の数字、方針、スケジュールをまとめた手帳型のルールブック)には「採用に関する方針」を明記しています。
「採用に関する方針」には、
- 価値観を共有できる人を優先して採用する
- 現実・現場を数多く体験させ、良いところ、悪いところを見せる
- 新卒採用は採用担当が行い、中途・パート・アルバイト採用は各部門の責任者が行う
- 新卒の学歴や成績は、参考程度にしか評価しない
- 3年以内に転職を考えている人の採用はしない
など、武蔵野の採用基準を具体的に示してあるため「辞めない人材」「武蔵野に適した人材」を採用できるようになりました。
2.採用部を設置してエース社員を登用する
多くの会社は、実力のある若手社員を売上に直結する部門(営業部や販売部)に配属します。ですが私は「若手のエース社員こそ、採用担当者に適任」だと考えています。なぜなら、内定者のロールモデルになるからです。
若手のエース社員は、内定者にとって「武蔵野に入れば、あの人みたいになれる」「武蔵野に入って、あの人のようになりたい」という手本になります。
3.内定者研修に力を入れる
内定者には「環境整備研修」「ビジネスマナー研修」「実行計画作成研修」「セールス研修」「内定者実践塾」「インターンシップ(社長のかばん持ち)」「給料体系勉強会」など、さまざまな勉強会に参加していただきます。
内定者研修を実施すると、武蔵野の文化に馴染むことができます。武蔵野の実態と実体を承知のうえで、それでもなお「武蔵野に入社したい」と望んだ人材を採用しているため、離職率が低い。
4.新入社員のトレンドに合わせて会社をつくり変える
私は、さまざまな心理分析ツールや適性テストを用いて、若者のトレンド(価値観)の変化を追っています。公益財団法人「日本生産性本部」が提供している「エナジャイザー(energizer)」というツールを使うと、業務能力・性格・業務適正・価値観など、目に見えない特性を診断することが可能です。
多くの会社では、従来の会社のやり方に新入社員を合わせようとします。ですが、それだけでは今の若者はついてきません。会社のやり方を押し付けられると、ストレスを感じて辞めてしまう。
会社のフレームワークに、新卒社員(内定者、就活生)をはめ込むのではなく、人が辞めないように、そして人が採用できるように、若手のトレンドに合わせて会社を少しずつつくり変えることが必要です。
【若者のトレンドの変化と対策】
- ストレス耐性が弱い
対策:かつてのように「上司が厳しく接して、社員の奮起をうながす」ことはできない。少しずつストレス耐性を強くしていくのが正しいマネジメント。
- 「給料」よりも「休み」が優先する
対策:残業や休日出勤が多ければ、新卒社員はすぐに辞めてしまうため、残業削減に取り組む。有給休暇、連続休暇が取れる仕組みをつくる。
- チーム意識が強い
対策:「同期の中で一番になりたい」と考える人は少数。「力を合わせて、みんなで一緒に目標を達成したい」と考える傾向にあるため、グループごとに社員教育をしたほうが結果を出しやすい。
※本記事は、小山昇:著『できるリーダーは失敗が9割 自分史上最高の営業利益を手に入れる「仕事」の極意』(マガジンハウス:刊)より一部を抜粋編集したものです。