人間関係と金銭問題のダブルパンチで病んでしまった心

すごく雑な例えですが、仕事の一例として「川の西から東へ橋を渡したい!」っていう案件があったとします。その場合「まずは、どれだけの資材が必要か見積もって、土台を固めて。そしたら次は、骨組みを作って、基礎ができたら、いよいよ橋のメインの部分を渡して……」って、そういった「順を追った丁寧な説明」みたいなのって、あるじゃないですか。

上司が部下に「指導」するっていうのは、こういうこと、ですよね。そういった的確な指導をその上司はしてくれずに、言うなれば「橋はつり橋がいい。強度は強くしろ。東とは太陽ののぼる方向だ。それがわかってないお前はダメ」みたい言い方をする人だったんです。

この言い方でわかる部下がいたら、そいつは部下なんてやってないで、さっさと独立して社長にでもなったほうがいい人ですね。これはアドバイスでもなんでもないんですよ。とりあえずダメって言われる。NGが出たから仕方なく残業してると、今度は「いつまでやってんだよ、定時内に終わらす努力をしろよ」とか言うんですよ。

相手は一応にも年上で、課長まで上り詰めた人です。当時の僕は、今以上に仕事では真面目でした。そうなると、どうなるか。

……病みました。

今の自分からは想像もつかないかもしれませんし、今の自分だったら、人生経験も積みましたし、多少は言い返せたかもしれません。もしくは「言わせとけばいいや!」くらいの気持ちで、我が道を突き進んでいたかもしれません。

本当に悩んで「会社、辞めようかな」と初めて思ったのが、このときでしたね。幸い、その上司の周りの人たちは、話がわかってくれる人だったので、まあまあとなだめられもしました。あのときに「もうちょっとだけ」とこらえられたのは、周りの人の支えがあってこそだと思っています。

一方、辞めたところで、どうしたらいいのか分からないですし、辞めるということは収入が途絶えます。ここが絶大に問題でした。

前述のとおり、スロットのおかげで極貧生活を送っていたわけですから、仕事がない間、いったいどうやって生きていけばいいのかも、分からないということになります。まして、住居すら会社のものなので、辞めたら当然出て行かなければならなくなります。

実家に帰るとか、方法論としては幾らでもあったのだと思います。大きい会社だったので、さらに上の上司に嘆願して、配置を変えてもらうとかもできたかもしれません。もしくは、無鉄砲な冒険家のように「ええい、ままよ!」と言って、何も考えずに風来坊のように当たって砕けたりとかね。でも、人生において、割と臆病に生きてきた僕にとって、それは無理な相談でした。

不思議なものです。こうなってしまうと、あれだけ楽しかったパチスロを、気分転換に打とうと思っても「心から楽しめない」んですよ。休みの日にホールに行ってみても「ああ、また明日から憂鬱な日々が始まるのか」と思ってしまってね。それ以上に、ただでさえ、お金に困り始めているのに、負けたらもっと憂鬱になる。そのうえ、唯一の固定収入でもある会社を辞めてしまったら、お先真っ暗になっちゃう。

人間関係と金銭問題のダブルパンチですね。

いずれかのシングルパンチだけだったら、なんとかなっていたのかもしれませんけど。そんな中で、若い僕が出した答えは「とりあえず寮を出よう、引っ越そう」でした。

といったところで、次回に続きます。あんまり重い話を引っ張るのもな、とは思うんですけどね。

『1億2000万分の1の激アツ人生』は次回9/27(日)更新予定です、お楽しみに。