江戸の男が気にしていた「腎虚」に効く飲み薬

365日春画を観る春画ールです。趣味で古典籍を蒐集して秘薬を再現したり、色事にまつわる記事を書いたりしています。

今回は、ある秘薬を和本で見つけたので、それを再現し自分で飲むことにしました。そのある秘薬とは、腎虚(じんきょ)に効く飲み薬です。

腎虚(じんきょ)とは?

セックスのしすぎにより精液を出し果たし、最終的には憔悴して死に至る恐ろしい病。江戸期には、男性が一生の間に放出できる精液の量は決まっていると考えられており、使い切ると身体が衰えると考えられていた。

わたしが江戸時代を生きる男性であれば、精液の量が決まっていて、しかも使い切ると衰弱する、と聞くと恐ろしく感じると思います。「なるべく節約して使わない」といけないと焦ることでしょう。

そこで私は、江戸時代を生きる男性になりきり、これはなんとか解決策を考えないといけないと思い、必死に江戸期の性典物を読み漁りました。

▲『和合淫質録』に希望の光が

腎虚の薬は、いろいろとありましたが、現代で手に入らない材料が多く、腎虚の薬を作ることは難しいかと思いましたが、文政八年(1825年)ごろ刊行された『和合淫質録(わごういんしつろく)』という本に希望の光がありました。

▲本の中にレシピが書いてあった!

腎虚(じんきょ)して、労症のごとく、わづらふものあり。
しかれどもその事を、医者に告げがたく思ふ心あらバ、左にしるす所の薬を用ひよ。
こハ俗法にあらず。

衛生易簡方(えいせいゑきかんはう) といふ書に出て功能更にうたがひなし。

破故紙(はこし) 百目 細末とす
胡桃肉(くるみのにく) 二百目 皮を去り研る(する)

右の二味、密にまぜて、飴のごとくに、ねりあげ、毎朝、温めたる酒のなかへ
かきまぜ、空腹(すきはら)に飲みて、その後、食事すべし。
永く、もちゆれバ、腎源(じんげん)を補ひ、労症(ろうしょう)を治すこと、
うたがひなし。

腎虚は都市伝説的な病気ではなく、実際に存在する病だと考えられていました。

そのため、たとえ体調を崩し「自分…腎虚かもしれん…」と心当たりがあっても、医者にかかることが恥ずかしい男性もいたようです。その場合、どうにか自分で治したいと考えた男性には、この本のレシピはありがたかったでしょう。

さすがに200年ほど前の本に記載されているものを再現して、パートナーに飲ませることはできないので(そもそも腎虚じゃない)、もちろん自分で試します。