それでは「腎虚」に効く秘薬を作ってみます

<用意するもの>
・破故紙(はこし)
・胡桃(くるみ)
・はちみつ
・酒
▲左が破故紙、右が胡桃

左の黒ゴマのような粒が破故紙で、右が胡桃です。

破故紙は、マメ科のオランダヒユと呼ばれる植物の種子です。

食感は、湿気った大きめの黒ゴマのようですが、味は苦く、鼻から抜ける香りは、病院で処方される甘い漢方のような独特な香りです。頻尿やインポテンツ。足腰の冷えに有効とされている漢方です。

ちなみに史料には、胡桃を二百目、破故紙を百目を用意すると書かれていたのですが、百目は約375グラムと知り、そんなに大量の腎虚の秘薬が使い切れる訳がないので、2:1の割合で少量を用意しました。

▲今回は少量を作ってみます

破故紙と胡桃をすりつぶします。ここへ、はちみつを投入し練り上げたものがこちら。

▲野沢菜の刻みっぽくも見えます

うーん、かなり食欲がわかない見た目です。人に食べさせるにはハードルが高すぎるので、やはり自分で食べます。

▲少量をお酒に投入

小さなスプーン一杯程度を、温めた酒に投入します。

▲ぐるぐるぐる…

ぐるぐるかき混ぜます。

▲完成!見た目は悪くないが…

きなこミルクのような見た目の腎虚の薬の完成です。江戸時代の腎虚にかかった男性の気分で有難くいただきます。

▲はちみつの甘みがなければ厳しい味

はちみつで練ることにより、胡桃の油分と破故紙が馴染んでいるのですが、噛むたびに破故紙の独特な苦みで「ウエッ」となりそうになります。はちみつの甘みが無ければ、わたしには腎虚でも飲みたくない味と風味といえるでしょう。

この胡桃と破故紙の薬は、古代中国から伝来している薬で、この二つの組み合わせでないと効果が無いとされていたようです。

腎虚の秘薬レシピは他にも存在し「地黄丸」という名前で、実際に販売されていた記録もあります。

このような性に関して回数の制限があるのは男性だけで、女性はそのような記載がされている書物は見たことがありません。

▲性のハウツー本『閨中紀聞/枕文庫』

渓斎英泉が書いた性のハウツー本『閨中紀聞/枕文庫』には、30歳以下の男性は血気に任せて交合をするため、女性がオルガズムに達する前に先に気がいってしまうことや、30歳以上の男性は惚れた女性に情が移りやすいことが書かれています。

そのため全ての男性に「むだまらをおやすな」つまり「ムダな勃起と射精は慎むこと」が重要であることが書かれています。

真面目な男性は交わる回数をしっかり守り、最終手段として薬を用いたのかもしれませんね。

ちなみにお酒が飲めないわたしは、この薬を飲んで休日の朝からへべれけになっただけでした。