キリン・コウモリ・ノウサギ…赤ちゃんの育て方

僕は、長野県にある動物園に勤務していた時から、たくさんの赤ちゃんを育ててきました。ここからは、育てた動物たちとのエピソードを簡単にお話します。

出産直後に、お母さんを亡くしてしまったキリンの赤ちゃんを育てていくのに、一番の問題となったのが、赤ちゃんの身長の高さでした。生まれた時ですでに僕と同じぐらいの身長。すぐに僕を追い越してしまい、脚立に乗ってミルクをあげていました。

空腹時、頭を大きく左右に振りながら哺乳瓶の乳首を探す勢いは強烈で、振り回している頭と首に飛ばされて、何度も脚立から落とされたことか……。大きくなっていくのは嬉しかったけど、育てるのは大変だったなぁ。

母親に育児放棄されたチンパンジーの赤ちゃんもいました。ミルクを飲み終えると、肩に頭を乗せ背中をトントン叩いてゲップをさせる僕。人間の赤ちゃんと一緒ですね。飲みながら寝てしまうこともしばしば。もういいかなぁと思い乳首を外すと大きな声で「ギャー」と鳴き、再び飲み始めます。

お腹いっぱいになると、乳首を外してもスヤスヤ。その繰り返しで、飲み終えるまで30分近くかかることも。背中をトントンした瞬間、飲んだミルクを全部僕の身体に吐き出してしまった夜もあります。夜中にシャワーを浴び着替え、ちょっと休むともう次のミルクの時間。自分の子どもの時とは、別の育児の辛さを味わいました。

▲チンパンジーも赤ちゃんのころは、こんな小ささなのです イメージ:PIXTA

コウモリの赤ちゃんには、サイズの合う哺乳瓶がないので、注射器の先に自作の乳首をつけてあげました。ちょっとでも多くミルクを出すと、ゲホッと鼻からミルクを出してしまいます。誤嚥(ごえん)させると命に関わるので、飲む速さに合わせちょっとずつ与えるのがコツです。

ノウサギの赤ちゃんは、哺乳回数が少なくてすむのですが、びっくりするぐらい濃いミルクをあげないといけません。ニホンノウサギは、毛が生えそろった比較的しっかりとした状態で産まれますが、みなさんがペットとして飼っているアナウサギと違い、穴などの巣ではなく、草むらで子育てをします。

天敵に見つかりやすいので、周囲の見張りが必須だからでしょう、母親は1日に数回しか哺乳しません。その為、腹持ちがいいように栄養価が高くて濃いミルクを出すのです。

レッサーパンダは、生後すぐは全身灰色で、かなり未熟な状態で産まれます。だんだん大きくなってくると、お馴染みのあのしっぽの縞模様が出てきます。よちよち歩きででんぐり返し。とにかくカワイイ……!

▲産まれたてのレッサーパンダは灰色なんです イメージ:PIXTA

ミルクはジャイアントパンダと同じパンダミルクを使いました。このミルクは、ジャイアントパンダ専用に日本の会社が開発したもので、このミルクによって世界中の人工保育のパンダたちが救われました。動物よって成分が全く違うので、それぞれの動物用にミルクが開発されています。

どうだったでしょうか。その動物に合った飼育方法で、動物園の飼育員さんや獣医さんは動物と向き合っています。今度、動物園に行く機会があったら、気になる動物の飼育方法について聞いてみるのも面白いと思いますよ。

今回はこのあたりで。みなさん、また次回お会いしましょう。

「スーパー獣医 Dr.北澤のどうぶつ事件簿」は、次回10月27(火)日更新予定です。お楽しみに!!


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