アーミッシュに魅了された山中麻葉氏はその実態を探るべく何度も現地に渡り、丁寧に取材を重ねてきた。アーミッシュは幼児洗礼を認めない再洗礼派に属するので、若者たちは自らの意思によって洗礼を受けることになるのですが、洗礼前は意外にも普通の若者と同じような生活を過ごしているようです。

※本記事は、山中麻葉:著『アーミッシュカントリーの美しい暮らし』(エムジェイブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

子どもたちは正式なメンバーではない

世の中の「便利なもの」に対して一定の距離を置くアーミッシュですが、その厳しいルールに従うか否かの判断は、実は個人に委ねられています。その判断は、アーミッシュの教区内で洗礼を受けるか否かの判断と同義です。

アーミッシュの家庭で生まれた子どもたちは、まだ正式なメンバーではありません。大人になって洗礼を受けて初めて、正規メンバーとして認められます。アーミッシュは幼児洗礼を認めない再洗礼派に属するので、自らの意思による洗礼は、重要なアイデンティティの一つでもあります。

子どもの頃からアーミッシュの習慣や文化の中で育てられますが、その生き方を選ぶか否かは、誰かから強制されることではなく、自分の意思で選びとることなのです。

▲アーミッシュの子どもたちも学校で学ぶ

アーミッシュの子どもたちは学校で初めて英語を学び、スピーキングや読み書きを習得します。 英語や算数、美術も学びますが、理科や体育の授業はありません。また、 子どもには「家庭の手伝い」という大事な役割があるため、宿題が出ることもないそうです。 

▲どの家も、大きな家庭菜園を持っている

アーミッシュの女性は無地のロング丈ワンピース、男性は襟つきシャツにデニムの吊りズボン、正装はプラスベストというスタイルがアーミッシュの一般的な服装です。

服のディテールのデザインは、エリアやグループによって異なります。 また、 生地の色にも差があります。 ペンシルヴァニア州ランカスターのアーミッシュでは、紫や濃い青の生地が一般的で、袖のギャザーがたっぷりと入ったデザインのワンピースを着ています。

オハイオ州のアーミッシュはギャザーが最小限で、Iラインのシルエットになるようなデザイン。さまざまなアーミッシュの服のデザインを観察することは、私の個人的な楽しみでもあります。

▲機能的で美しいアーミッシュの服