世界的に注目されるLPS(リポポリサッカロイド)という成分。名前は聞き慣れないものだが、実はとても身近な成分で、感染症予防を始めとするさまざまな効果がわかってきています。健康・長寿を保つ強力な成分として、日常の食生活に取り入れたいLPSの働きについて、LPS研究の第一人者である免疫学者の杣源一郎氏がわかりやすく教えます。
※本記事は、杣源一郎:著『免疫ビタミンLPSで新型コロナに克つ -感染症予防のカギは自然免疫にあり！-』(ワニ・プラス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
人間の体に備わっている防御システムが「免疫」
人間の体を、細菌やウイルスなどから守るために備わっている防御システムが「免疫」です。このシステムは非常に複雑で精密なものですが、簡単に言うと「自己とは違うもの」が体内に入ってきたとき、それを「異物」として、すぐさま攻撃したり排除する仕組みのこと。
たとえば風邪のウイルス、下痢などを引き起こす細菌、アレルギーの原因となるさまざまな物質。体内で生じる異物、がん細胞を攻撃するのも免疫系の役割です。
免疫系には２系統があり、一つは自然免疫、もう一つは獲得免疫と呼ばれています。自然免疫は、生まれたときから人体に備わっているもので「外敵」が侵入してきたらすぐさま発動し「異物」と判断したものを、ムシャムシャ食べて処分してしまう、というもの。その主役になっているのは、マクロファージを始めとするさまざまな細胞です。
- 好酸球：寄生虫処理が得意な白血球のひとつ
- 好中球：白血球の５割がこの細胞で退治した異物処理をする
- NK細胞：ナチュラルキラー細胞。細胞内のウイルス、がん細胞を退治する
そして主役とも言えるのがマクロファージ。マクロファージは侵入した異物を食べる(貪食といいます)細胞で、同時に異物の情報を他の免疫細胞に伝える役割も担っています。
もうひとつの系統が獲得免疫です。これは生まれながらに持っているのものではありません。
一度侵入してきた細菌やウイルスの情報をきちんと記憶し、二度目以降に侵入したときに備える物質(抗体)を作る、という仕組みです。たとえば「はしかは一度かかってしまえばほぼ一生、二度とかからない」いったことは、この獲得免疫が働いているためです。
ワクチンもこの仕組みを応用し、感染する前に体内に「抗体」を人為的に作っておこうとするものです。「インフルエンザのワクチンを接種しておけば感染しにくい、感染しても重症化しない」というのは、体内にワクチンの効果で獲得免疫ができたということです。
自然免疫は日常生活のなかで強化できる
免疫システムというのは、何重にも重なり、しかも互いが緻密に連携したネットワークですが、その働きの強さ、つまり「免疫力」は人によって違っています。
獲得免疫の場合は「過去に感染したことがあるかどうか」「ワクチンを接種したかどうか」によって、免疫の“ある”“なし”が決まりますが、自然免疫のほうは日常生活つまり食生活・生活習慣・加齢・持病・投薬・さまざまなストレスなどによって、大きな個人差が出てきます。
コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、ワクチンの開発・接種に期待が集まり、世界各国で実施も始まっていますが、ここで期待されてるのは「獲得免疫」で、私たちが日常生活のなかで自ら強化できるのは「自然免疫」のほうです。
自然免疫の力が強ければ、感染経験やワクチン未接種でも細菌やウイルスに感染しない、あるいは感染しても重症化しにくく、さらに獲得免疫も強化されることがわかっています。
自然免疫の主役とも言うべき細胞はマクロファージですが、全身に分布するマクロファージの働きを活発にしておけば、自然免疫は自ら強化することできるというわけです。
自然免疫の要であるマクロファージの活性化に有効なのが、LPSという物質です。LPSはリポポリサッカロイドという成分で、身近な土壌菌などのグラム陰性菌と呼ばれるグループの細菌の細胞壁に含まるもの。LPSは私たち哺乳類等の真核生物は持たず、細菌だけが持つ成分です。
そしてLPSは、我々の生体恒常性を維持するうえで、重要な機能を果たす環境因子の一つなのです。その働きは、まさにビタミンに似ているとも思われることから、我々研究チームは、LPSを「免疫ビタミン」として位置づけられるのではないかと考えています。LPSの発見やその機能は、まさにビタミンと称しても差し支えないものです。
このLPSは皮膚・口腔・腸管・土・植物など、あらゆるところに存在し、穀類・野菜・海草などに多く含まれます。細菌はもともと土壌にいるので、土壌の細菌(とLPS)は，根菜にはもちろん、葉野菜や穀類、海の中の海草にもついているからです。
日常の食生活で摂れるものですが、現代人は「泥付き野菜」を買う機会も減り、玄米を食べることも少なく、海藻を食べることもあまりなくなってきています。
LPSは、もともと日本の昔ながら食事には非常に豊富だったのですが、生活の西欧化につれて摂取はどんどん減っており、それが、自然免疫の力を弱める大きな要因のひとつになっています。
ぜひ、LPSの摂取が含まれる食品の多く摂って、自然免疫力を高めてください。食生活だけでは補えない場合には、LPSサプリメントを利用してもいいと思います。