AO・推薦型入試による入学者数が私立大学では50%を超え、国公立大学も今後一般入試以外による選抜を30%以上にするとしています。もはや従来の丸暗記学習は受験では通用せず、思考型の試験が中学・高校・大学受験とも上位校で増えています。それはAIの進化などにより、社会で求められる人材が急速に変化しているからに他なりません。

先生に“教わる”のではなく、みずから“学ぶ”力を育む「オンライン学習」の欧米での事例と家庭での応用について、教育環境設定コンサルタントの前田大介氏に聞きました。

※本記事は、前田大介+松永暢史:著『子どもがぐんぐん伸びる「オンライン学習」活用術』(ワニ・プラス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

自分自身で「学ぶ力」を引き出す勉強法

アメリカで生まれ、欧米の教育先進国でもいま急速に普及しているオンライン学習「ブレンディッド・ラーニング」をご存知でしょうか?

これは「個別学習×生徒主導」をモットーに、子どもが自然と学びに入りやすく、それぞれに合った学び方を提案する学習法です。各自の学力や性格、目標などに応じて、個別のカリキュラムを組み、やる気次第で進度を変える。クラス一律の時間割はありません。

生徒個人が動画授業を先に見てから、必要なときだけ先生に質問する「反転授業」や具体的な体験を通して学ぶ「探究学習」などを柔軟に取り入れ、個人でおこなうべき学習と集団でおこなうべき学習を上手にブレンドしています。

これらを実践した結果、多くの子どもたちが落ちこぼれなくて済むようになりました。また、必要最低限の学習時間でカリキュラムを習得することにも成功しました。

一方、日本では、ブレンディッド・ラーニングはほとんど普及していません。日本の子どもたちはオンライン学習の恩恵を受けられないのでしょうか?

いいえ、そんなことはありません。ただし、学校や塾で与えられるのではなく、自宅でこそ、このオンライン学習を実践することができると僕は確信しています。

そして、オンライン学習を活用し、子どもが主体的に学習するように導くことで、これからの時代の受験にも勝つことができます。

鍵を握るのは「反転授業」と「探求学習」です。

このふたつの学び方こそ、ブレンディッド・ラーニングの主軸となる学び方で、子どもが自分から学ぶ力を引き出す方法として注目を浴びています。これらを自宅で応用すれば、やらなきゃいけない教科学習をさっさと済ませられるので、楽しみながら受験勉強することができます。

学習効率のよい「反転授業」

「反転授業」は、動画授業を利用したオンライン学習のひとつです。講義の動画を各生徒が先に見ておいて、教室ではディスカッションなど、より深い学習からはじめるというものです。

つまり、動画授業で予習したあとに、質疑応答やディスカッションなど、リアルでおこなったほうが効率のよいことは、実際に対面で授業をします。

最大のメリットは、深い考察にまで至る時間が作れることです。ひとりでできることを先に済ませることによって、きっちり準備ができ、より深い議論ができるというわけです。限られた授業時間のなかで、応用的な内容にまで踏み込むので、より効率的に子どもの能力を高めることができます。

やるべきことが多い受験勉強においても、反転授業のやり方を実践すべきです。なぜなら、ひとりで学べることをどんどん先に動画で見ていけば、以下のようなメリットがあるからです。

  • 必要な単元の動画授業だけを受けることができる
  • 授業の解りやすい先生を自由に選べる
  • 得意な教科は学年を無視して進められる。苦手な教科はマイペースにできる
  • 本人がやってみたい教科・単元をとことん追究できる
  • 本人のモチベーション次第でやり方をアレンジできる
  • 余った時間に、応用問題の演習を十分におこなえる

まさにいいことづくめ。反転授業は塾のデメリットを画期的に解消してくれます。実際、僕の教え子の小学五年生は動画授業をベースにして、半年で一年分の算数の単元を終わらせたこともあります。

▲学習効率のよい「反転授業」 イメージ:PIXTA