従わなければ逮捕してFacebookに写真を投稿

私が住んでいるルソン島北部に位置するバギオ市の実態は、こんな感じだ。

ロックダウンが始まったばかりの3月は、週に2回のみ外出が許されていた。外出時は、区役所から1世帯1人にのみ発行される通行証を保持し、市内至るところに設置された検問で提示、スーパーに入るときも提示といったような感じだ。開いているのは生活に最低限必要となるスーパーや市場、医療機関や銀行などだけ。

▲フィリピンの通行証

通行証を持っていない、もしくは区ごとに決められている外出可能日程以外に外出すると、検問で止められるか門前払いにされた。

それだけであればまだ良かったが、ルールを守らずに外出する人が目立っていたので、市がそれに対応し逮捕された。

  • マスクなしで外出した人
  • 外出可能日程以外に出歩いた人
  • 門限である18時以降に出歩いた人(市内で外出できる時間が決められている)

さらに、顔はモザイクをかけてもらえるのだが、謝罪のプレートを持たせられて市のFacebookに写真を投稿されるという、日本では考えられないような恥辱を与えられる。ここまでされたら誰もルールを破ってまで外出しようとは思わないはずだが、日本人が逮捕されたこともあった。

フィリピンではFacebookがとんでもなく普及しており、フィリピン人全体の約70%が利用している(肌感覚ではほぼ100%)。ロックダウンに関してのアナウンスは各エリア・各市の公式Facebookページに投稿される。「見ていませんでした」では済まされないため、毎日ページをチェックしなければならなかった。

Facebookの投稿を見ていると、リカー・バン(禁酒令)が発令されることもあった。その名の通り「お酒を飲むのを禁止」という内容だが、これがアナウンスされるとスーパーやコンビニから酒類が取り除かれ、飲酒しているのがバレると、これまた逮捕される。

理由は、酒があるとロックダウンにも関わらず人が集まり、そこで集団感染する危険性があるからということらしい。例えば、フィリピンの建築現場では、建設中の建物に作業員が完成するまで“住みこむ”システムが普通だが、そこで実際に飲酒による集団感染が確認され、リカー・バンが強化・再開されるといったことも何度か起きた。リカー・バン中に禁酒に耐え兼ねた作業員が、酒の代わりに消毒用アルコールを飲んで死亡した、というニュースが流れたこともあった。

▲リカー・バン(禁酒令)によりビニールがかけられた酒棚

6月に入ると、封鎖が緩和され、週3回ほどの外出が可能になった。デリバリーのみで対応していたレストラン・カフェでの店内飲食も可能になったが、定員の半数が上限として決められ、席も1つ1つ空けないといけない。カップルで行っても席を離されるため、男女が別々に来たような感じになる場面もあった。

市内に数店舗あるショッピングセンターの運営も再開され、少しずつ人の流れが戻ってきた感じだ。ちなみに、ジプニーやタクシーなどの公共交通機関利用時と、商業施設入場時にはフェイスシールド着用が義務付けられていて、これをつけていないと入れてもらえない。

徐々に外出の門限が20時、22時と緩和され、バーやクラブの営業も再開された。

11月には、通行証なしでスーパーやレストランなどへの出入りができるようになるが、入る際には体温測定・アルコール消毒・個人情報の記入が求められている。個人情報は全部の施設で記入を求められるため、みんな疲れて殴り書きで記入しボックスに入れる。どこまで役に立っているのかは不明だ。

▲警察官に通行証を見せる

市外から市内へのエリア間移動も緩和されてきており、PCR検査の陰性証明書や旅行許可証などの必要書類を揃えることで、観光を受け入れている地域には旅行が可能となっている。

ロックダウン開始時期から変わっていないのは、コロナ感染者が出た区や、言うことを聞かない人が多い区は、道路が全て封鎖されて外出ができなくなるということだ。事件が起こったかのように「KEEP OUT」の黄色いテープを貼られ、警察官が門番をしている。レストランやデパートでも、従業員から感染者が出ると一定期間営業停止となる。