地球外生命体がどこかに存在すると思っています
我々は、宇宙の科学的な研究や開発を通じて、宇宙に対する洞察を深めていくことで、我々自身やふるさとである、この青い惑星に対する理解と愛といった感情も深まっていくように思うのです。
地球という閉鎖系に生命体が留まっていることは、エントロピー〔熱力学などで定義される状態量の一つ。系の乱雑さ・無秩序さ・不規則さの度合を表す量で、物質や熱の出入りのない系ではエントロピーは減少せず、不可逆変化をする時には、常に増大する〕の増大、つまり朽ちていくことを意味します。
生命体は閉鎖系ではない開放系で命を保っている限り、すなわち宇宙へと活動領域を拡大していくことでエントロピーを減少させる、つまり人類としての秩序を維持し存続していけると考えられます。
宇宙人が我々のところに
やってきたとしたら、
クリストファー・コロンブスが
アメリカに到着したことで、
アメリカ・インディアンが
さんざんな目に遭わされたときと
同じような状況になると考えている。
『3分でわかるホーキング』より
地球という惑星は、この広い宇宙で「生命体を育んできた、ただ一つの奇跡の星」と言われてきました。ただ最近では、太陽系外にも「ハビタブルゾーン〔太陽のような恒星とちょうどいい距離にあって、水が液体として存在する温度を保ち、生命が誕生するのに適した領域〕」の存在が確認され、その領域にある惑星の存在も確認されています。
この先、観測が進めば、それらの惑星における生命の存在が発見される可能性もあります。そうなると、生命を育む星は地球だけでなく、じつは宇宙に無数に存在していた、ということになっていくのかもしれません。
私は地球外生命体が宇宙のどこかに存在すると思っています。それが「知的かどうか?」「現在、存在しているのか?」「過去に存在していたのか?」、あるいは「これから誕生しようとしているのか?」などといったワクワクする疑問がわいてきます。
「知的生命体」という定義が、どこまでの範囲を示すかにもよりますが、少なくとも地球上で文明を築いてきた我々人類は、宇宙に存在する知的生命体と言って差し支えないと思います。ただ、ホーキング博士は
「原始的な生命体はどこにでもいるが、知的な生命体は非常に珍しい。地球上にもまだ生まれてない、と考える人だっているだろう」
『3分でわかるホーキング』より
という自虐的なジョークにもとれる言葉も残しています。
※本記事は、若田光一:著『宇宙飛行士、「ホーキング博士の宇宙」を旅する』(日本実業出版社:刊)より、一部を抜粋編集したものです。