漫才の日本一を決める『M−1』や『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、数々のお笑い番組に携わってきた放送作家・倉本美津留さん。あまり知られていないが、実はフリップ(ボード)を使った「フリップ大喜利」の発明者でもある。一方で長年、音楽活動を続けてきたほか、小説『びこうず』を執筆したりYouTubeの番組に出演したりと、エンタメの分野で縦横無尽に活動を続けている。

「面白くない人」なんていない

そんな倉本さんに、個人的な興味から「どういう人を『面白い』と設定しているのか?」とたずねてみた。すると、こんな答えが返ってきた。

「人間は全員、面白いと思ってるんですよ。面白くない人なんていない、と」

プロの芸人だけでなく、すべての人間が「面白い」というのだ。どういうことだろうか。

「みんな面白いんですよ。面白いところを見つけてもらってなかったり、自分で気づいたりしていないだけで。僕は誰かとちょっとしゃべるだけで、その人を面白くできる自信がありますよ。『そこんとこ、もうちょっと聞かせてよ』って」

▲みんな違って、みんな面白い?「笑い」はプロだけのものではない

まさに、お笑いのプロらしい言葉だ。

「だから僕は、みんなもっと大喜利をやるといいと思っているんです。大喜利の答えって“その人”が出る。お笑いのことをよくわかってない人ほどね。で、そこが面白いんですよ。『これは、君にしか出せへん答えやな!』ってのがあるんです」

バラエティ番組を多数手がけてきた放送作家だから「笑い」はプロにしか生み出せないものだと言うのではないか、と考えていただけに意外だった。

倉本さんのこうした素地は、どのように作られていったのだろうか? また、倉本さんにとっての「土壇場」はいつ、どこであったのだろう。半生を振り返ってもらった。

「自分は『絶対に世の中に認められるはずの天才である』と、おかしなくらい思っていましたね」

倉本さんは、若い頃の自分をそんな風に振り返る。「表現で世の中にうって出よう、天下を獲ってやろうという思いがあったんです」。だから大学を卒業しても就職せず、バンド活動を続けながら、バイトで食いつないだ。焦りは一切なかったという。

「いつか認められるはずだ」。その思いは小学生高学年の時点ですでにあった。「子どもの頃から人と同じことができなかった」という倉本さんは、小学校でも周りから浮いていた。だが、そのことで仲間外れにされるようなことはなかった。積極的に「浮いているほうが面白い」とアピールすることで、逆に、友だちを「浮いている側」に引きずり込んでいったのだ。

「こんな風にしたら、人は僕を評価してくれるんだとか、大阪で育ったので、人を笑わせたら僕を応援してくれるようになるんだなぁとか。そういうことを日々、経験しながら生きていましたね」