リアル書店には書店員さんがいます。そして電子書店にも“顔が見えない”書店員さんがいます。なかなか実態が見えない電子書店の“中の人”にアレコレ聞いてみようと思います。

今回は、1996年に日本初の同人ダウンロードサービスを「ソフトアイランド」という名称でスタートし、2001年からは現在の「DLsite」に変更し20年以上サービスを運営する、老舗電子書店にお勤めの斎藤さんと山田さんのお二人にインタビューしました。

▲電子書店 DLsite

「ネコミミ」が好きだったからサービス開始!?

――本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介からお願いします。

DLsite 斎藤さん(以下、DL斎藤) 私は、出版者様が配信されている作品の販売管理者として働いております。ただ弊社は、二次元コンテンツをコア層向けに発信しているサイトですので、実写の写真集とかそういった電子書籍は扱っていないんです。

漫画以外にも、ゲームを題材にしたような書籍とか、そういった作品を主に取り扱ってます。それをどうやって売っていくか、というプロモーションを考えたりするのが、私の立ち位置となっております。

▲DLsite 斎藤さん

DLsite 山田さん(以下、DL山田) 私は、出版社様とのやり取りや、サイトの中を見たりします。まぁ、基本的には全般をやっている感じですね(笑)。ただ、どちらかというと営業寄りなので、いろいろなプロジェクトを企画したりしています。

▲DLsite 山田さん

――ありがとうございます。DLsiteさんは設立されて20年以上ということで、ソフトアイランドから数えると電子書店としては、かなりの老舗ですよね。

DL山田 そうですね、1996年に日本初の同人ダウンロードサービス「ソフトアイランド」という名称でスタートして、2001年に現在の「DLsite」という名前に変わってからも、20年以上は運営していますね。

――同人サービスを最初にされていたということなんですが、電子書籍といいますか、商業作品が加わってからは何年くらいになるのでしょう?

DL斎藤 2008年4月から商業作品も取り扱いさせていただけるようになったので、商業作品でも12年くらいの歴史はあると思います。

――デジタル同人のサイトとしては先駆けですよね。

DL斎藤 出版社様の作品に加えて、クリエイターの方が個人で作られた同人作品も多く取り扱っているので、リアル書店や弊社以外の電子書籍サイトでは、なかなか見かけないジャンルの作品があったりします(笑)。

最初はCG集とか、そういった作品からだったと思うのですが、それ以降はゲームなどコア層に刺さるようなコンテンツを増やしていったことで、ニッチなジャンルを扱うサイトとして認知され、ここまで成長してこれたところがありますね。

――電子書籍がまだ今ほどではない頃、同人誌を電子化して販売するサイトを始めるキッカケなどあったんですか?

DL斎藤 私が聞いた話ですと、創業者が猫とネコミミが好きだったようで、なぜか猫好きのサイトから、こういったサイトになったとか(笑)。ネコミミだけでなく、二次元コンテンツオンリーのサイトとして発足して、今に至るというような経緯になっています。

▲DLsite公式Twitterアカウントアイコンもネコミミ

「変わることを恐れない」を大事にしている

――弊社の電子書籍担当から聞いたのですが、10年ほど前くらいに御社からキャンペーンの提案があったらしく、その頃は書店さんから提案がくるのが珍しかったので、出版社との連絡を積極的に取られていると感じたそうです。

DL斎藤 ありがとうございます、そこは弊社の強みの一つなのかなと思っております。電子取次さんから案内される施策だけではなく、弊社のユーザー様に合ったようなキャンペーンの展開や、こうしたほうがユーザー様に読まれるかな、ということを考えながら、その出版社様の作品をどういった形でアピールしたら一番良いのか……など、いろいろと提案させていただいます。

――システムの対応というのも強みだとお聞きしておりますが、具体的にはどのような感じでしょうか?

DL山田 弊社は、良くも悪くもこじんまりしていて、売上は2018年度には約120億、2019年度は昨年度比130%の約160億、2020年度も150%を超える速度で成長をしているのですが、良い意味でいろいろなことを自社で済ませよう文化がありまして(笑)。ある程度ノウハウもあるとは思っているんですが、出版社様からも「DLsiteって、すぐ仕様変更したりするよね」って言われます(笑)。

それができる理由は、自社で開発部署を持っているということと、変わることを恐れない社風があります。数百万人のユーザーを持ってるサイトでは、少しサイトUIだったりを変えてしまうと一気に売上が下がる、ということがありえる状況で、弊社は逆にダメな理由を先に知りたいという考えがありまして。

なので、このパターンはダメというのを蓄積していくみたいな文化のなかで、出版社様の施策やユーザー様からの反応だったり、失敗と成功を繰り返して成長していけているのかなと思います。