アメフラっシのライブはもう見逃すことはできない

▲この日、どの衣装でも見事なまでにその曲の世界観を演じ切ったアメフラっシ

ただ楽曲を披露するだけでなく、こうやって導入部にプラスアルファを置くことで、楽曲の世界観へと没入しやすくなる。これもまたコール&レスポンスが難しいコロナ禍でのライブにおいて「魅せる」「聴かせる」ことを主眼においての演出なのだろう。

さらに『フロムレター』の冒頭では愛来が。『メタモルフォーズ』の冒頭では鈴木萌花が、それぞれモノローグを読んだ。2020年に舞台や朗読劇に出演してきた2人だからできる役回り。そういう意味でも、まさに「2020年の集大成」だった。

もちろん、そういった演出がどんなに素晴らしくても、肝心のパフォーマンスの仕上がりがいまひとつだったら本末転倒になってしまう。そのあたりは第1部でなんら心配ないことは実証済みなのだが、驚いたことに、第1部で過去のパフォーマンスを完全に上書きしてみせた、と思っていた楽曲の数々が、ほんの数時間後、この第2部のステージでさらに上質なものとして上書きされていたのだ。

特に印象的だったのは『雑踏の中で』。この楽曲は4人体制がスタートした2019年12月15日、神田明神ホールで初披露されたもの。これはもう個人的な主観になってしまうが、正直、最初のころはあまりピンときていなかった。

いい曲だし、これまでのアメフラっシの楽曲とは色合いが違うので、たしかにセットリストにメリハリがつく。4人にとって「必要なもの」であることはわかっていたのだが、なんかしっくりこないできたのだ。

それがこの日『メタモルフォーズ』のMVで着用した白い衣装をまとい(ステージではこれが初披露となる)、『Interlude-街角の楽団-』ではふたたび傘を持ってのパフォーマンスを演じ、その流れで歌い出した瞬間、もうピン!ときてしまったのである。

きっと、今までは「うまく歌おう」「音程を外さないようにしよう」という部分に気持ちがいってしまっていたのだろうが、もう歌い出す前から曲の世界観がステージ上で構築され、その中にメンバーも入り込んでいるから、曲が、歌詞が、どんどんこちらにも入ってくる。

第1部で聴いたときにも「あぁ、すごく良くなったなぁ〜」と思っていたが、もはやまったくの別次元だ! 数時間でここまで楽曲が化けるとは……こうなってくると「もうアメフラっシのライブはひとつも見逃したくないな」という気持ちになってしまう。

7月の単独配信ライブが終わったあと、愛来は「これが私たちの軸になる、というものがやっと見つかった」と話してくれた。あの日のライブは、MCナシでひたすらカッコよく歌い踊ることに振り切ったもの。それをアメフラっシの基本軸としたことで、これまでもキャッチフレーズとして掲げてきた“変幻自在”の意味がより明確になってきた。

言ってしまえば、この日の第2部は“変幻自在”のオンパレードだった。過去の自分たちの楽曲までも、ここまで新鮮に見せることができるのだから、ブレない軸が定まったことは本当に大きい。