アジアのお菓子は宗教と密接な関係があった!

インド『パティスリーを埋め尽くす、神々への“お供え物”』

インダス文明が起源とされ、その長い歴史のなかで多くの宗教が誕生したインド。

仏教、ヒンドゥー教、ジャイナ教などは、インドが発祥の地だといわれ、他にもイスラム教徒やキリスト教徒なども一定数を占める、“宗教のるつぼ”。

そんなインドの食文化は、宗教との密接な関係のなかで生まれ、時の流れによって形骸化することなく、今なお人々の暮らしに根ざしています。

そしてお菓子もまた、“お供え物”として生まれた、保存がきくものがほとんど。それらは街のパティスリーのショーケースを、常に埋め尽くしていました。

世界を見渡すと、宗教由来の古典菓子は、儀礼の際だけに用意されるなど非日常的なものが一般的ですが、宗教が人々の暮らしのなかで、あまりにも身近で、密接なインドにあっては、その例は当てはまらないのかもしれません。

▲『パティスリーを埋め尽くす、神々への“お供え物”』

ネパール『インドにはないお菓子を見つけるのも楽しみの一つ』

南アジアに位置し、“世界の屋根”ヒマラヤ山脈のふもとに広がるネパール。

東・西・南の三方を接しているインドとは、特に歴史的、文化的に結びつきが強い国です。

インド同様に、国民の約80%がヒンドゥー教徒というネパールでも、やはり食文化と宗教は切っても切り離せない密接な関係にあり、お菓子は、宗教儀礼などで必要となる「お供え物」から生まれたものがほとんど。

そのためインドのものとは名前は違えど、中身はほぼ同じお菓子にも出くわします。

もちろん、ネパールでしか見ることのできないお菓子との出会いもありましたが、いずれにせよ、国という単位で語ることのできないお菓子文化の奥深さを、私に教えてくれた国の一つです。

タイ『都市化が進んでも変わらない、昔ながらの屋台文化』

今や東南アジアで1、2を争うほどの経済規模を誇るタイ。

約10年ぶりに首都バンコクに降り立つと、そこには想像していた以上の光景が。朝の通勤ラッシュですし詰め状態の電車に、日本の百貨店を思わせる商業ビル。

タイの食文化が育まれた舞台として欠かせないのが「屋台」ですが、これだけ都市化が進めば、もうその姿を見られないのではと嘆く人もいるでしょう。

でもご心配なく。朝、昼、晩、道路にあふれ返る屋台、屋台、屋台…!10年前と変わらぬ活気が、そこにはありました。

パティスリーはあまり見かけず、アジアならではの豆を使ったものから、フルーツやゼリーといったのど越しのいいものまで、今なお、お菓子は屋台で楽しむのが、現地の人々の日常のようです。

▲お菓子は屋台で楽しむのが、現地の人々の日常

ミャンマー『街もお菓子も過去と未来がせめぎ合う、ミャンマーの“今”』

長く社会主義政権、軍事政権下にあったこの国も、徐々に民主化が進み、経済も高い水準で成長を続けています。

そして、ミャンマー最大の都市ヤンゴンは、過渡期にあるこの国の縮図。イギリス植民地時代の老朽化した建築物と喧騒が交錯するダウンタウン。それらを飲み込まんとする勢いで、建築ラッシュが進む新市街。

前者では昔ながらの屋台の甘味に、後者では海外のエッセンスを取り入れた目新しいデザートに、人々が行列を作り、ミャンマーのお菓子にも、この国の今を見て取ることができたように思います。

これまでもインドや中国、タイなどから影響を受けてきたミャンマーのお菓子は、現在進行形で変化を続けているようです。