日本の大手新聞各社およびテレビ局各社は平和主義的です。平和主義を利用して脊髄反射的に体制批判を繰り返すことで、ビジネスしているメディアばかりだと言ってもいいでしょう。日本に蔓延している平和ボケによる弊害と、私たちが直視しなければならない本当の真実、メディアが伝えない共産主義との関係について、歯に衣着せぬケント・ギルバート氏が解説。

※本記事は、ケント・ギルバート:著『強い日本が平和をもたらす 日米同盟の真実』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

中国・韓国に迎合する日本のマスコミ

現代の日本は、正しい情報をいくらでも手に入れることのできる国、と言いましたが、そこには「自らが望んで努力すれば」という条件がつきます。情報を提供するのがメディアの役目であり、多くの人はテレビや新聞からさまざまなことを知りますが、それが事実に基づいているとは限りません。

「日本のマスコミは事実に興味がない」

東京・中日新聞で論説副主幹を務めていた長谷川幸洋氏が、共著のための対談中にそう話してくれたことを思い出します。事実に興味がない、ということは、自らの主張のためなら情報の捏造もよしとする、ということです。そして、そういった偏向性を持っているマスコミの代表が朝日新聞でしょう。

現在も、韓国が国家戦略とし続けている慰安婦問題を後押しするように、朝日新聞が報道していた慰安婦強制連行に関する報道記事が誤りだったことは、すでに常識として、多くの人はご存知でしょう。

2014年(平成26年)、朝日新聞は朝刊の紙面を割いて、報道の根拠となっていた吉田清治という人物の証言が虚偽だったと認め、慰安婦に関する16本の記事の取り消しを表明しました。

正直に言いますが、私は、旧日本軍による慰安婦の「強制連行」問題を真実だと信じていたひとりです。20万人の韓国女性が、慰安婦として強制連行されたというその数は眉唾ものだとしても、朝日新聞やジャパンタイムスがあれだけ熱心に伝えているのだから、基本的な部分は正しく、韓国が言うほどひどくはないにせよ日本の軍隊は悪いことをしていたのだろう、と思っていました。

日本の近代史について、さほど詳しくなかったという背景もあります。私は長年だまされていたことにやり場のない怒りを感じて、自分の公式ブログに「朝日新聞へのアドバイス」というタイトルのコラムを書きました。

慰安婦記事の取り消しは韓国に大恥をかかせた、千年恨まれることになるから、朝日は今すぐ韓国に謝罪と賠償をしたほうがいい、という皮肉のコラムです。このブログが話題になって執筆の依頼がくるようになり、さまざまなところで皆さんとお目にかかっているわけです。

旧日本軍が数十万人の中国人を大虐殺したという「南京事件」も、1970年代に朝日新聞の記者・本多勝一が連載した「中国の旅」という記事が定着させたものです。これについても、朝日新聞および本多勝一は、南京事件およびその虐殺性そのものは否定していないものの、写真や資料の誤用を認めています。

南京事件については、その存在自体についてさえ政治や歴史学の各方面で論争が続くまま、2015年に中国側の文書がユネスコの世界記憶遺産に登録されてしまいました。

朝日新聞の姿勢を180度変えた転換点

朝日新聞が中国や韓国に迎合するような記事を書き、日本という国を貶めるような報道をするのには歴史的な背景があります。

終戦直後の1945年(昭和20年)9月18日、朝日新聞はGHQから2日間・48時間の発行停止命令を受けます。GHQの占領政策にそぐわない記事を載せたためですが、これを機に朝日新聞は変節し、GHQに媚びるようになります。戦前の朝日新聞はきわめて体制寄りの新聞でした。

GHQは9月19日に通称「プレスコード」、正式名称「日本に与うる新聞遵則」を発令します。遵則は「朝鮮人への批判の禁止」「中国への批判の禁止」を内容に含んでいました。このプレスコードを、朝日新聞労働組合初代委員長の聴濤克巳(きくなみかつみ)という人物が、自らのイデオロギーのために利用します。聴濤は、日本共産党のエリート党員でした。聴濤は、右寄りでさえあった朝日新聞を左翼へと変節させます。

▲朝日新聞大阪本社 出典:ウィキメディア・コモンズ

その後、聴濤は国会議員になりますが、レッドパージで公職追放され中国に渡航。現地で「北京機関(日本共産党在外代表部)」を組織して「自由日本放送」という地下放送局を開設します。「自由日本放送」は中国の対日プロパガンダに加担しました。実際的に中国に加担する人物が朝日新聞から出ているのです。

今も続く朝日新聞の左翼偏向・親中親韓偏向は、この時期の変節をそのまま引き継いでいるものでしょう。若手の記者が、社会主義的・左翼的・反体制的ではないバランスのとれたまともな記事を書くと、ベテラン記者に潰されるとも聞いています。

第三者団体の日本ABC協会が監査して認定した発行部数のことをABC部数といいますが、2020年(令和2年)5月度の発表で朝日新聞は昨年度から43万部、部数を落としました。部数の減退は新聞業界全体の傾向なのですが、それでも朝日新聞は、ABC部数770万部の読売新聞に続き、表向きの数字であるにせよ500万部強を誇る日本の大新聞です。

つまり、日本で多くの人々に読まれている新聞が、きわめて強い偏向性を持っている、ということです。