フィンランドの首都・ヘルシンキ在住2年目の筆者が体験した、コロナ禍となった1年間のトピックを、写真とともにお伝えする。他国では見られないフィンランド独自の取り組みもあり、コロナ禍でも生活を楽しもうという国民性が垣間見えるようだ。
どこでも同じトイレットペーパー買い占め現象
緊急事態宣言が発令された2020年3月、フィンランドでも日本や他の国々と同じように人々はトイレットペーパーを買い占めた。最寄りのスーパーマーケットでは、保存食の棚も空になり、後日「ご不便おかけしてすみません。再入荷までお待ちください」との看板が、あちこちに立ち並んでいた。
この買い占め行為は、ヘルシンキ新聞などの地元紙で「hamstrata(ハムストラタ)」という表現で報じられた。言葉のとおり、我先にトイレットペーパーや食料をできるだけたくさん買い込む人たちは、さながらエサを頬袋いっぱいに溜め込むハムスターのようだ、という意味。
フィンランドのフードデリバリーは「Wolt」
新型コロナによって大躍進したともいえるのが、フィンランド発のフードデリバリーサービス「Wolt(ウオルト)」。イギリスの『Financial Times(ファイナンシャルタイム)』によると、ヨーロッパで2番目に急成長を遂げた企業に選ばれており、2020年3月には広島を皮切りに日本の一部の都市でもサービス展開が始まった。
〇Wolt[https://wolt.com/ja]
このアプリは直感的に操作できて、眺めているだけでも楽しい。家から一歩も出ずにレストランの食事やカフェのスイーツが味わえるので、私もあっという間にヘビーユーザーになった。
また、コンタクトレス配達を選べば配達員がドア前に商品を置いてくれるので、直接対面しなくて済むので安全だ。とくにこの冬は、新型コロナに加えて大雪、南部ヘルシンキでさえマイナス10℃以下の日も多く、外出が億劫なので利用頻度がさらに上がった。
私が通勤するとき、Woltのバッグを抱えた配達員を街中で見かけない日はない。Woltがこれだけ目覚ましく成長したのは疫病の脅威だけでなく、外に出かける気力を容赦なく奪うフィンランドの長くて厳しい冬の環境と、新型コロナで職を失った人々が働き口を求めて配達員が増加・稼働したことの相乗効果なのではと思う。夕刊紙にはスキーで配達に勤しむ強者の目撃情報もあった。
レストランのシェフも配達員も人間なので、ミスはあって当たり前だが、フライドチキンを注文したのにピザが2枚届いたり、メニューにはミートボール15個と書いてあるのに10個しか入ってなかったり、注文してから80分経過しても届かなかったりなどの問題もたまにある。その際は、アプリのチャットを介してクレームを出すと、返金や再配達などで即対応してもらえるので安心だ。
ドイツ発のフードデリバリーサービス「foodora(フードラ)」も使ったことがあるが、トラブル時の対応が遅くてイライラしたので使わなくなった。
2020年12月、在住2年目にして初めてフィンランドでクリスマスを迎えた。クリスマスは親族が集まって食卓を囲み、イヴにプレゼントを贈り合う文化なのだが、この時期のWoltは抜かりない。
日本でもおなじみの北欧雑貨ブランド「marimekko(マリメッコ)」や「iittala(イッタラ)」などの商品だけでなく、クリスマスツリーまで配達してくれるのだ。ちなみにフィンランドでは、モミの木を自分たちで森から切り出すか「IKEA(イケア)」などのホームセンターで買ってきて、飾り付けするのが一般的である。
贈り物探しに奔走する私を横目に、パートナーはWoltで身内向けのプレゼントをすべて手配したので、ソーシャルディスタンスが忘れ去られたショッピングセンターに出向かずに済んだ。
私が受け取ったクリスマスカードのなかには、Woltのギフトコードが添えられたものもいくつかあったので、大晦日のディナーもデリバリーになり、知らないうちにWoltにどっぷりハマった2020年だったとつくづく思う。