“ぶっつけ本番”が観衆とのさらなる一体感を生んだ

▲メンバーと観衆のペンライトが一緒に動く様(さま)は圧巻だった

最初は「?」となった。「崩す」とはいったい? 昼の部ではしっかりとしたパフォーマンスを披露することに注力していて、それが満足度の高さにもつながっていたのだが、それをあえて「崩そう」というのだ。

そのきっかけとなったのは、昼の部での『Rain Makers‼』だった。前回の記事で書いたように、この曲でメンバーはペンライトを手にパフォーマンスをした。その姿を見たお客さんは、メンバーと同じように片手に2本のペンライトを持ち、一緒に踊ってくれた。

ステージから、いつもとは違う「楽しみかた」を発信すれば、お客さんはそれに乗ってきてくれる。こればかりは実際にやってみなければ、どうなるかわからない。その回答が昼の部でハッキリと出たわけで「もっともっとステージから発信していこう」という話になったのだろう。それこそが「崩す」という表現につながった。多少、パフォーマンスが崩れてしまってもいいから、客席を巻き込むように煽ったり、動いたりしてみよう、と。

メンバーも「ファンとの一体感をもっと出したい」と望んでいた。より楽しめるように、開演前にはメンバーが出演するVTRでライブの楽しみかたや、新グッズの使いかたを繰り返し観客に案内してきたが、やっぱり、その場でやってみせることがライブ感につながる。

リハーサルの最中、ボイストレーニングを担当するMARICO先生が、この日から発売された応援グッズのツインバットをバンバン叩いて盛り上がっていた。

「でもさぁ、みんな、おとなしいよね。私みたいにバンバン叩いているお客さん、ほとんどいなかったでしょ?」

ライブ中にあんまり荒ぶられても困ってしまうが、たしかにツインバットの開発趣旨は「コロナ対策で声を出せない代わりに、このバットを叩いて“推し”に感情を伝えよう」というもの。曲に合わせて鳴らす楽器ではない(とはいえ、曲と違うリズムで叩かれるのも、周りのお客さんがちょっと困ってしまうかもしれないが……)。

もっとお客さんの感情を引き出すことができれば、きっと、一体感はより深まる。そこで「崩す」という案が浮上してきたのだが、すでにリハーサルの時間は終わり、メンバーは楽屋へと戻っている。そう、これは「あと数分で夜の部が開場する」というタイミングでの話だったのだ。

おそらく、これから楽屋でメンバーに説明があるのだろうが、それらを実際にステージで敢行するのは本番が最初、ということになる。まさにぶっつけ本番。だが、それでこそ「ライブ感」が生まれる、という部分も大きい。

▲ライブが進むにつれて、その存在感が増すようになったツインバット