Zepp Hanedaという大舞台で経験した“魅せ方”と“見え方”

▲お客さんとのあいだにあるアクリル板の存在を忘れるほどのパフォーマンスを披露

ミニライブの開催にあたり、お客さんの安全面を最大限に考慮した結果、客席間のスペースを十分に取ったうえで、ステージと客席エリアのあいだにはアクリル板で仕切りを作る、という形となった。壁を1枚隔てることにはなってしまうが、リハーサル中にスタッフがあらゆる客席からステージを眺め、なるべく反射しないように、また継ぎ目が気にならないように何度も微調整を繰り返していたのが印象的だった。「魅せる」ステージのためには、こういった細かい作業も大事になってくる。

記者も最前列に座ってみたり、最後方の端っこに移動してみたりしながらリハーサルを見ていたが、とにかく、どのポジションからでもめちゃくちゃ近い! 2週間前にZepp Hanedaの2階席からライブを見たばかりなので、余計に近さを感じてしまうのだろうが、それは多くのお客さんは同じ感覚を覚えたはず。

そして、なによりもメンバーがその近さを感じていた。いや、それだけでなく「アクリル板を挟むことで、逆にステージが遠く見えてしまうのではないか?」ということを非常に気にしていて、いかに臨場感を強く打ち出すかを真剣に考えていた。

きっと小さいステージだけしか経験していなかったら、ここまで気にすることはなかったのではないか? 一度、Zepp Hanedaの大きなステージを経験したうえでのインストアイベント。魅せ方と見え方を改めて考える、いいきっかけになったはずで、そういう意味でも開催した意義はあったのだと思う。

この店に来るたびに思い出すのが、2016年に僕が拙著『ももクロとプロレス』のトークショーを同じ「HMV&BOOKS SHIBUYA」で開催したときのこと。事前にまったく告知せずに百田夏菜子が乱入する、というビッグサプライズに場内は騒然となった。

それもそのはず、ももクロはドームツアーの真っ最中。毎週、数万人の観客の前でパフォーマンスしている百田夏菜子が、わずか数十人の前に降臨するのだから、普通に考えたらありえないこと。だが、ももクロチームは「だから面白い」と、このサプライズを仕込み、百田夏菜子も「いいねぇ、面白いじゃん!」とノリノリで参加。実際、ステージ上からお客さんに対してドームツアーの感想を聞きまくるなど、この近さだからこそできるコミュニケーションを楽しんでいた。

ドームとZeppでは規模感が違うが、理屈は同じこと。大きなステージを踏んだからといって浮足立たずに、しっかりと足元を見つめなおす。これこそが次なる一歩を踏み出すために大事なことで、回り道をしているように見えるかもしれないが、けっして無駄足ではないのだ。

▲普段のキャパの半分かつ着席して観戦など、より徹底した感染対策も講じられた