日本の教育システムからこぼれ落ちた技能実習生
日本に暮らす外国人労働者のなかには、ナイトクラブのようなグレーの世界で働いたり、無届けでビジネスをしたりしている人もいる。彼らはトラブルに見舞われた際、日本の警察に頼ることができない。そこでギャングのような人間たちに金を払って身を守ってもらう。
彼や彼女たちは、家族を伴って来日することが多いため、その子どもたちが不就学になって社会の隅に追いやられることが少なくない。そういう子たちの一部がギャングのようなグループを結成する。
こうしたグループが生み出された原因はどこにあるのだろう。
日本が行なってきた外国人に対する政策を振り返ってほしい。国は不足した労働人口を補うために、入管法を改正したり、技能実習生制度をつくったりして、貧しい国から大勢の労働者を招き入れてきた。
この政策自体が間違いだったというつもりはない。だが、日本に来てまできつい仕事をしようという外国人は、そもそも母国で仕事にあぶれる要因を持っている率が高いうえ、日本としても受け入れ態勢をきちんと整えてこなかった。それゆえ、親の都合で連れてこられた子どもたちが日本の教育システムからこぼれ落ちていった。
日本人のなかには、こんなふうに言う人も少なくない。
「外国人のほうが自分の意志で日本にやってきたんだ。なんで、日本政府がそこまで責任を負って面倒をみなければならないのか。日本人だって外国に行けば同じような目に遭う可能性がある。少なくとも日本にはなんの責任もない」
僕はそう思わない。なぜならば、日本はそれまでの欧米諸国の例から、外国人を大量に招き入れれば、こうした問題が起こることを予期していたはずだからだ。
たとえば、ドイツでは第二次世界大戦後、復興のためにトルコをはじめとした諸外国から大勢の労働者を呼びよせてきた。そのため、今では国内に暮らす人のうち5人に1人が移民をルーツに持つ人たちになった。
しかし、ドイツは労働力の受け入れを優先するあまり、その子どもたちの教育を二の次にしていた。そのため、1990年代にはすでにドイツ語のわからない移民の子どもたちが増加したり、学級崩壊が叫ばれたりするようになった。
やがて、それはドイツ社会に移民の貧困層を生むことになり、治安悪化などの問題へつながった。
ドイツ以外でも、欧米諸国は日本よりも早い段階からこうした移民問題に直面してきた。
日本はその事例から結果を予想できていたのに、適切な対処を取らないまま外国人労働者を受け入れ、欧米とそっくりな問題に直面している。だとしたら、日本はやるべきことを怠ったと言えるんじゃないだろうか。
僕たち日本人は、いま日本で外国人児童の約15.8パーセントが不就学になっており、日本語の読み書きもほとんどわからないまま大人になっていく事実を、しっかりと見つめなければならない。
過激な人はこう言うだろう。
「そんな人たちは母国へ追い帰せばいいんだ」
でも、彼らは母国とのつながりがまったくない。日本で生まれたり、幼い頃に来日したりした彼らにとって、故郷はあくまで日本だ。たとえ犯罪を起こした人を捕まえて強制送還させたとしても、次から次に外国人労働者が日本にやってくる現状を考えれば、根本的な解決にはならない。
僕たちがしなければならないのは、モグラたたきのような、その場限りの対処ではなく、社会としての受け入れシステムを作っていくことだ。
日本で、日本語の読み書きができない外国人の層を拡大させれば、日本社会に悪い影響を及ぼすのは火を見るより明らかだ。
僕たちは今、何をするべきなのか。
現在、日本の教育現場における外国人児童への対応は、定まった形があるわけではなく、現場の先生たちのボランティア精神に委ねられている。