緊急事態宣言時に無料開放!

――去年(2020年)、最初の緊急事態宣言のとき、読み放題サービスを無料開放されていましたよね。電子書籍自体が上り調子になっていたタイミングでもありましたが、無料開放してくださることによって、さらにハードルが下がり、電子書籍を試してくれた方がかなり増えたんだろうな、という印象があります。

寺内 あのときは無料開放をしていたので、多くのお客様に加入していただけたのと、購読数もかなり伸びました。出版社様側にもご賛同いただいて「なんだったら追加で読み放題に投入しようか?」というお声掛けもいただいて。お客様には、それなりの価値を提供できたと思ってます。

ステイホームせざるを得ない状況になってしまったお客様に読書を楽しんいただくため、また、世の中的に活字離れが叫ばれているなかで久しぶりに本を読むきっかけになればという考えで、商売抜きでやらせていただきました。

著者や出版社と連携していく面白さ

――次に、電子書店員として面白さを感じる瞬間、というのをお聞きしたいのですが。

寺内 実は面白いのに埋もれてしまっている書籍や、セカンドシーズンが刊行された書籍のキャンペーンを実施したときに、お客様はじめ出版社の方からも「すごくいいですね」とか、著者の方から「うれしいです」「私もTwitterで拡散します」とか、反応やコメントをいただくことがあって。そのときは、出版業界でただ商売をしているだけではなく、皆さんから認めてもらえたと実感できて、非常に面白いかなと思います。

私は以前、携帯電話販売業務をしていたことがありますが、その業務ではどちらかといえばお客様から直接褒めていただくというパターンが多かったです。それもうれしさや、面白さはもちろんありましたが、著者の方や、出版社の方から直接お言葉をいただけたときは非常に面白いと感じる瞬間です。

――弊社も最近『韓国文学特集』や『このBLに感謝』特集でお声がけいただきました。数多くあるBL作品のなかで、弊社を選んでいただいたときは「見つけてもらえた」といううれしさもありましたし、ジャンルのなかでも狭めたテーマで特集を組んでもらえると、ユーザーの方も手に取りやすいですよね。

寺内 単純にセールをして、お客様に売るというパターン以外で「この本面白いよ!」「この本読んでる人は絶対こっちもいいよ!」というような、書店員としてのレコメンドをもう少し強化していきたいなと考えています。

――なるほど。このお話は書店員としての苦労や悩みにもつながっていきますか?

寺内 コストをかけてお客様に届けることができれば一番早くて楽ですが、普段は少年漫画しか読んでいないお客様に対して、他の作品の面白さを届ける手段がなかなか見つけられず、その辺が苦労するところかなとは思います。

――そうですね、ジャンルを超えたひも付けができるといいですね。

寺内 コミック以外も、どんどんレコメンドをしていきたいです。例えば、サッカーマンガを読んでいる人は、サッカーが好きなのか、青春ものが好きなのか、というように分かれると思うんです。サッカーマンガを起点に、いろいろオススメできるはずだと考えていて。システム的な観点も含めつつ、どうやって的確にお客様に届けていくかが最近のストアとしての悩みです。

――レコメンドって本を全部読んで選んでいるんですか? システムチェックじゃなくて。

寺内 システム的に選んでいるケースもありますが、本好きのメンバーがたくさんいるので「この本だったら、こういうのもオススメに混ぜたほうがいいんじゃない?」など、スタッフの意見を反映させて、グルーピングしたりしています。