リアル書店には書店員さんがいます。そして電子書店にも“顔が見えない”書店員さんがいます。なかなか実態が見えない電子書店の“中の人”にアレコレ聞いてみようと思います。

今回は、電子書籍も動画も音楽もひとつのアプリで楽しめる“オールインワン・エンタテイメント・プラットフォーム”「U-NEXT」を運営する、株式会社 U-NEXTの中野さんと崎山さんにインタビューしました。

▲電子書店「U-NEXT」のロゴ

1つのアプリにまとめたことで売上は6倍に

――まずは自己紹介からお願いします。

中野 U-NEXTのブック事業を運営してます、中野と申します。

▲U-NEXTの中野さん

崎山 同じく崎山と申します。よろしくお願いします。

▲U-NEXTの崎山さん

――よろしくお願いします。それでは、U-NEXTさんの電子書籍サービスを教えてください。

崎山 U-NEXTは2007年にサービスの開始をしまして、電子書籍をスタートさせたのが2014年。その後、2019年1月にU-NEXTと、2015年に事業承継しました東芝さんの「BookPlace」を統合しまして、1つのアプリで動画も電子書籍も一緒に楽しんでいただけるというようなサービスを作りました。おかげさまで売り上げも伸びておりまして、現在の月間の売上規模で申しますと、この2年4ヶ月で6.4倍になっています。

――伸びがすごいですね。これは年々に順調に伸びていったのか、それとも去年の巣ごもり需要から一気に、という感じですか?

崎山 そうですね、巣ごもり需要で一気に加速したなという印象はありますが、最初の山があったのは2019年1月以降ですね。1つのアプリになったタイミングです。

中野 もともと別のアプリだったんですよね。「U-NEXTに入っていれば、BookPlaceアプリも利用できます」という説明はしていたんですけど、やっぱりなかなか伝わりづらくて。そもそもログインはどこからするの?ってところから迷われてる人も多かったんで、1つのアプリに統合することで、ユーザーが爆発的に増えたってのはありますね。

――たしかに使いやすさで全然違いますもんね。何度も押さなきゃいけないと、どんどん面倒くさくなっちゃって。

中野 そうですね。しかもサービス名も当時は「BookPlace for U-NEXT」っていう、一見違うサービスに見えるというのもありましたし、ウェブがメインだったんですけど、アプリがViewアプリで、ウェブもドメインがまたちょっと違ったりとかして。東芝さんから事業承継したっていうところもあって、U-NEXTと統一感がある形になっていなかったので、それでは売り伸ばしが難しかったんです。やはり統合したことが良い方向に向かったかなと思ってます。

U-NEXTの魅力のひとつはポイント還元率の高さ

――アピールポイント、他の書店との違いなどをお聞きしたいのですが、キーワードの“オールインワン・エンターテイメント・プラットフォーム”が、イチオシっていうことですよね。

崎山 はい。出版社さんからよく伸びるね、と言われるタイトルが、まさにメディア化された作品の原作であったり関連作だったりするので、そこで評価をいただくことが多いですね。

――弊社でも、5月28日から『2gether』の邦訳小説版とコミック版を合わせた施策をさせていただいたんですが、御社にたくさん売っていただきました、ありがとうございます!

中野 タイBLに関しては、動画は積極的に調達してまして、うちの独占コンテンツもかなり多いんですね。『2gether』もそのうちの1つで、タイBLは本当にコアなファンが多くて、小説やタイBLドラマを特集したようなムック本もよく買われています。なので、タイBLはビデオ側にすごくファンが多い。ちょっと話が派生しちゃうかもしれないんですけど、アジア系のドラマファンが多くて、韓国語の教本が英語よりも売れる傾向があります。

――なるほど、韓流は根強いですね。

中野 はい。漫画だけじゃなく、書籍でも動画で見られるものが売れやすい傾向にありますね。

崎山 テレビで話題になった作品が、ランキングに入ってくるのはよくあります。なので、エンタメにすごく興味がある人がユーザーにいらっしゃるところが、書籍にも影響が出やすいというところでしょうか。

――なるほど。月額会員の仕組みを説明していただけますか。

中野 月額2,189円をいただくんですけれど、毎月1,200円分のポイントが付与され、電子書籍の購入や動画のレンタルに使えます。さらに、その1,200円分のポイント以外の支払い方法で購入された場合は、最大40%をポイントで還元します。

――そんなに戻していいんですか!って感じの大盤振る舞いですね(笑)。

中野 そうですね(笑)。電子書籍サービスを専門でやってるところだとなかなか難しいと思いますが、うちの場合は動画配信サービスも提供しているっていうところがあるので、本に関してはできるだけユーザーさんに還元しようという考えかたです。あとはポイントで、どんどん本を買ってもらうのも戦略の1つにはなっています。

動画サービスだけだと、目的のものを見たら辞めてしまう人もいらっしゃるんですが、購入した本が本棚にずっと残ってるっていうのは、解約率を下げる1つの要素になってくるのでは? と仮説を立てて、アプリを1つにすることで、解約せず月額サービスを継続してくれるお客さんを増やす狙いでやってます。なので、本はどんどん買ってもらって、自分のアカウントを残して使っていただきたいですね。

――言われてみれば、たしかに…。すごい戦略ですね。月額会員になったら、アプリのみじゃなくて、サイト利用もできるわけですよね。

崎山 はい。これは動画ですけれど、テレビでの提供もしておりますので、デバイスもお選びいただいて使っていただける環境をつくってます。

――なるほど、やっぱり電子書籍が見られるのはアプリが多いですか?

崎山 そうですね。基本的にはアプリが多いですね。

――雑誌も読み放題で電子書籍も読めて、動画も見れて、音楽も聞けるのであれば、このアプリだけでエンタメが楽しめるじゃないですか!

崎山 そうですね。どっぷりとハマっていただいてるお客さんに関しては、いろいろ楽しんでいただける作りになってると思います。