『知らない世界』以外にも意外なインスパイア先が!

まず最初に驚いたのが、出演者が素人なので、打ち合わせにかなり時間をかけるか、もしくは台本が厚く作られているか、のどちらかと思っていたのだが、打ち合わせは収録準備の雑談から、軽くきっかけや流れなどを確認するのみ。台本も数ページで、セリフらしきものは必要事項や情報のみが記載されているシンプルなものだった。

「この台本がテレビの収録に置いてあったら、出演者は怒って帰っちゃいますね(笑)」

と、このチャンネルのプロデューサー・カメラマン・ディレクターも兼務するハヤシユタカさん(@hayashi_project)は笑って話す。

印象的だったのは、ハヤシさん含めスタッフが出演者とコミュニケーションを取って、本番前の前室から和やかな空気を作っていること。そのかわりに、取り上げるテーマ(この日は消しゴムだった)について、事前にハヤシさんがしっかりとリサーチを行っていた。こういう空気づくりが、決してプロではない有隣堂の個性豊かな方々が輝ける秘訣なのだなと感じた。

そもそも、このYouTubeチャンネルがスタートしたきっかけは、ハヤシさんが有隣堂の社長と知り合いだったことからはじまる。

「書店・出版業界は結構しんどいよね、ってイメージがあって。有隣堂も、ご多分に漏れずにそうだと伺ったので、雑談の中で僕が社長に“じゃあYouTubeやったらどうですか?”って提案したのがきっかけですね」(ハヤシユタカさん、以下ハヤシ)

最初はハヤシさん抜きで書籍を紹介する動画を更新していたが、登録者数も再生数も伸びず。チャンネルの方向性を変えることになったが、バラエティ形式になったのには何か理由があったのだろうか。

「これは、あるYouTuberの方が言ってたことなんですけど、まず見られるチャンネルにしないと何も意味がなくて、“じゃあ見られるためには?”ってなると、先人の成功者の組み合わせに独自色を加えると面白いものができるって理論ですね」(ハヤシ)

そして、個性的な動画チャンネルが出来上がった構造を明かしてくれた。

「その理論を、このチャンネルに当てはめると、まず地上波で有名な番組のフォーマット、それにプラスして……これは初めて言うんですけど(笑)、tvkの『saku saku』って番組が僕は好きだったので、パペットとゲストが話す形式を加えたんです。そこに、YouTubeで流行りの編集や演出に、神奈川県民に愛されている有隣堂という独自色、この組み合わせがたまたま結果として、こういう構成になったというだけで、最初からバラエティ色の強いものにしようという気持ちでやったわけではないです」(ハヤシ)

▲入念に段取りを確認する岡﨑さんとスタッフ

記念すべき初回のテーマ「キムワイプ」ってなに?

記念すべき初回に取り上げたものは「キムワイプ」。パルプ製のティッシュのようなもので、多くは科学実験に使われる器具の清掃に利用される。自分もこの動画を見るまで知らなかったし、多くの人がイメージできないものを初回に取り上げたのは、なかなか勇気のいることだったのではないだろうか。

「初回をどうするかは、僕と有隣堂の方を含めて打ち合わせしたんですが、実は初回は“テプラ”を取り上げる予定だったんです」(ハヤシ)

当時、テプラは有隣堂の推し商品。一方、キムワイプは有隣堂で取り扱いのない商品だった。ただ、その時点でのチャンネルの登録者数は300人余り。

「そこでテプラを紹介しても誰も見てくれないですよ、って言ったんです。だったら本当に紹介したいもの、愛があるものを紹介したほうが良いですよ、って話になって。そこで、岡崎さんがキムワイプを紹介してくれて、“面白いからそれでやってみましょう”って提案しました」(ハヤシ)

その流れで、2回目はガラスペン。こちらも一般の人には馴染みのない文房具だが、岡崎さんの愛のある解説に、ブッコローの「amazonで買った方が安くない?」というブッコミが映える、いわゆる「神回」だ。