ギャングイーグルのメンバーとのタイマン勝負

「ギャングイーグルの方ですか?」

突然の電話だった。相手はヘラヘラ笑いながら話している。ナンバーワンのチームの人間に対してすることではない。僕はギャングイーグルだ。目に物を言わせてやる。そう息巻いて、軽い空気を一蹴するかのように怒ってみせた。ところが相手は本物のギャングイーグルだったのだ。

「誰に向かって口聞いてんだテメー! コッチが本物のギャングイーグルだよ! 今すぐパラディアに来い!!」

血の気が引いた。今までの人生は窮地に陥っても、なんとか乗り越えてきたが、今回こそは打つ手がない。終わった。呼び出しに応じないという選択肢もあるが、相手は電話番号を知っている。家を知っていてもおかしくはない。家族に迷惑はかけられない。パラディアは、自転車で5分の場所にあるゲームセンターだ。急いで家を出た。

先に着いて待っていると、遠くのほうからバイクの音が聞こえてくる。1台や2台じゃない。すごい数の音だ。ドクン。一気に鼓動が早くなった。その瞬間に、前方からバイクが1台2台3台と来るのがわかった。約10台以上のバイクに、20人以上が乗っている。ぞろぞろとバイクから降りてきた男たちの視線が、すべて自分に突き刺さる。仲間たちを従えるように、1人が先頭に立って問いかけてきた。

「お前か? ギャングイーグル語ったヤローは」

あれ? 小野木さんだ。小野木さんからしたら、僕は後輩の友達で、数日前に挨拶をしたばかり。そのことを思い出してくれさえすればなんとかなる! 頼む、小野木さん。思い出してくれ!

「グローブ持ってこい」

わずかに抱いていた期待は、脆くも崩れ去った。完全に忘れている。

「僕ですよ、僕! この前の僕ですよ!」

そう言いたいが、喉元までしか言葉が上がってこない。後輩らしき人が、バイクの椅子の蓋を開けてハサミを取り出している。ほどなくして、パンチングマシーンのグローブを切って持ってきた。すると約20人が、円になるように、僕を囲んでリングを作った。

前に出てきたのは、中学時代の1個上の先輩。この人が言うには、ゲームセンターで僕に睨まれたことがあるらしい。まったく身に覚えがない。おそらく殴り合いをするための理由づけだろう。恐怖で足の震えが止まらない。

「本気でやんなかったら、全員で袋にするからな」

グローブを渡された。携帯のストップウォッチ機能で、1ラウンド3分を計ろうとしている。ここで手を出したらヒドイ目に遭わされるとは思ったが、相手は本気でやれと言っている。

それに目の前の先輩は、中学時代に素行の悪い印象がない。勝てば官軍で許してくれるかもしれない。しかし、そんな淡い願いは、スタートの合図と共に打ち砕かれた。渾身の右ストレートを繰り出した直後に、気を失うかのようなパンチが顔面を襲った。

立ち上がって再戦を挑める状態じゃないのは、僕だけじゃなく第三者が見ても明らかだったと思う。鼻血の流れ方が『タラッ』ではなく『ドロッ』だった。相手の1人が付き添いで、トイレに案内してくれた。

「大変だったね」

「ハァ、ハァ、はい」

息切れが止まらない。水で洗い流して、なんとか血は止まったものの、鼻の痛みが尋常ではない。トイレから出て、引き続きどんな目に遭わされるかわからなかったが、不思議と恐怖心はなくなっていた。

このチームの人たちは、血も涙もない連中ではない。大勢で殴りかかるわけではなく、1対1で戦ってくれた。勝負ありと判断した時点で止めてくれた。ずいぶんイメージとは違う。漫画で見る不良の世界はないと思っていたが、目の前の人たちは理想の男たちだった。

「よし。じゃあ今週の土曜、19時に集会来いよ。岐阜の十六(じゅうろく)前な」

こうして僕は、地元で最大の規模を持つギャングイーグルに入ることができたのだ。

「45」は、次回11/19(金)に更新予定です。お楽しみに!!


プロフィール
 
福田 健悟(ふくだ けんご)/吉本興業所属
平穏な家庭に育つも、高校生になり不良の道へ。地元、岐阜県で最大の規模を持つ不良チームのリーダーとなる。18歳の頃、他チームとの抗争が原因で留置所に2週間、鑑別所に2週間の計4週間を更生施設で過ごす。週に1回の入浴、美味しくないご飯、笑うことが許されない環境で生活をして当たり前の日常の大切さに気づく。そもそも子どもの頃になりたかったのは、お笑い芸人だった。周りにナメられるのが嫌で言い出せなかった。不良を演じて虚勢を張っていた。出所後は本当の自分になることを決意し、お笑い芸人を目指して上京する。わずか10万円を握りしめての東京生活。コンビニでアルバイトをしながらも舞台と日常を分けずに常に芸人としての自分を貫く。すると近所で評判のコンビニ店員になる。「あのお兄さん大好き」「接客のプロ」とたくさんの称賛をいただきながら実感する。人は変われる——。世間から忌み嫌われていた不良が世間から愛される人間に更生した。人生における全ての「負」から立ち直った経験を生かして、他人のありとあらゆる「負」も更生する。つまらない時間を面白い時間に「更生」するため、お笑い芸人として活動中。Twitter→福田健悟@ganeesha_fukuda