スポンサー契約は自分で掴み取る

――いくつかの企業とスポンサー契約を結ばれています。シャー選手ご自身が、企業にアプローチされているんですか?

シャー:基本的には僕とマネージャーからのアプローチがほとんどですね。時間を見つけて、マネージャーと2人で企業にご挨拶に行っています。マネージャーは、一緒に東京五輪を目指していた子なんです。五輪開催の半年くらい前に出場できないことが決まってしまって。

内心すごく悔しかったはず。でも、すぐに「私はこれからマネージャーに専念します」と僕の力になってくれたんです。本当にうれしいし励みになりました。

五輪って企業のロゴなどを見せるのが禁止なんですね。だから、企業側にとってはメリットがまったくないんです。スポンサーになる意味がない。しかも、僕は日本人ではないし、メディアへの露出も期待できない。でも、僕への想いだけで契約をしてくださる方々がいてくださるんです

今回の東京五輪は、そういった皆さんのおかげで出場できた大会でした。スポンサーになってくださった方々には、今後もずっと恩返しをしていきたいです。

――練習の合間にご自身で行かれているんですか、厳しい環境ですね。

シャー:そうですね。正直とても厳しい環境です。もっと選手を大切にする「選手ファースト」の環境を作らないといけないと思います。

アスリートがスポンサーなしで生活していくというのは、とても大変なことなんです。
練習よりも毎日の生活をどうするかのほうが大変。パリ五輪を目指すということは、そういった日々が再び始まるということ……。それがパリ五輪に突き進むにあたって、少しの迷いにもなっているのも正直な気持ちです。

真剣な表情で自身の環境について語ってくれたシャー選手

≫≫≫ 後編へ続く

【編集部より】
東京五輪で不完全燃焼に終わった悔しい思い。日本という地で外国人アスリートとして過ごすなかで、さまざまな困難などを語ってくれたシャーフセイン・シャー選手。インタビュー後編では、シャー選手のパーソナルに迫っていきます!

 

プロフィール
 
シャーフセイン・シャー
⽣年⽉⽇:1993年6⽉8⽇(28歳)
出⾝地:イギリス⽣まれ、⽇本育ち、パキスタン国籍
⾔語:⽇本語、英語、ウルドゥー語
学歴:練⾺区⽴貫井中学校→安⽥学園⾼校→筑波⼤学卒業
柔道歴:23年 / 192cm 100kg
*現在フリーで活動する柔道選⼿(都内住み)
2016年リオオリンピック柔道100kg級パキスタン代表として出場→パキスタン史上初の柔道オリンピック選⼿となる。2021年東京オリンピック出場。