海外では盛んなスポーツの勝敗結果予想に対する賭け事、いわゆる「スポーツ・ベッティング」。日本では今のところサッカーくじtotoしか導入されていませんが、本格的に日本でスポーツ・ベッティングを解禁した場合、国内市場規模は7兆円とも言われています。現在、法律によって賭け事が認められた公営競技は、競馬・競輪・競艇・オートレースの4事業のみですが、裾野が広がれば日本経済復活の大きな鍵になると、国際情勢アナリストの渡瀬裕哉氏は語ります。

※本記事は、渡瀬裕哉:著『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ-令和の大減税と規制緩和-』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

見るだけでなく賭けて楽しむスポーツ

現代は、さまざまなスポーツの楽しみかたがあります。読者の皆さんも、自分でプレーしたり観戦に行ったりと、スポーツに触れることがあるでしょう。

文部科学省が実施している「スポーツ活動に関する全国調査」では、ウォーキングやジョギングから野球、サッカーなど全国的に人気の高いスポーツ、地域イベントなどのスポーツボランティアへの参加まで、国民がどのようにスポーツを楽しんでいるかをデータとして目にすることができます。

▲日本のスポーツ・ベッティングは「サッカーくじtoto」のみ イメージ:PIXTA

いろいろなスポーツのなかでも、サッカーは平成3年(1991)にプロリーグのJリーグが設立されてから、熱心なファンが盛り上げてきました。日本サッカーリーグが発足したのは、昭和40年(1965)年と半世紀前のことです。

当初、アマチュア競技の全国リーグとして実業団チームが参加し、1968年のメキシコオリンピックで銅メダルを獲得したことを機に、国内でも人気スポーツとなりました。1980年代後半にプロリーグ化の動きが起こり、現在のJリーグへとつながっていきます。

Jリーグの設立趣旨には、日本のスポーツ文化としてのサッカーを振興・普及させることや、各地域に根付くホームタウン制を基本に、ホームタウンの環境整備やサッカーを通じた地元住民への貢献が謳われています。

さらに、平成10年(1998)5月に公布された「スポーツ振興投票の実施等に関する法律」にもとづいて、スポーツくじができました。

そのなかでも、自分の予想をもとに勝利するチームを選んでポケットマネーを賭けるtotoは、試合結果などのデータを一覧できるウェブサイトもあり、人気を博しています。こうしたスポーツの勝敗結果予想に対する賭け事は、スポーツ・ベッティングと呼ばれます。

サッカーや野球に共通するのは、チームや選手のファンの人たちと交流して、地道にお客さんを増やしていく経営スタイルです。これは海外でも日本国内でも同じです。そこに新しい楽しみかたとして、スポーツ・ベッティングを解禁している国はかなり多いのです。

世界でブックメーカーのサービスが広がる理由

特に、現在主流となっているのは、パソコンやスマートフォンを使って、オンライン上で完結する方法です。仲介する企業はブックメーカーと呼ばれ、各社がオンラインサービスを競っています。そのなかには、株式が上場されている仲介企業もあります。運営のための法律も整備された合法サービスです。

サッカーだけではなく、いろいろなスポーツがサービスの対象で、勝敗・スコア・得点者・優勝チームなど、スポーツに含まれるさまざまな要素に対して、利用者はオッズを見て、賭けることができるようになっています。

当然、勝てる可能性の高い強いチームは倍率が低くなり、弱いチームほど倍率は高くなります。高倍率のチームに賭ければ、損をする可能性も高いけれども、当たれば賭けたお金が何倍にもなって返ってきます。

みんな自分のお金を実際に賭けているので、チームのことや試合の流れを真剣に考えて、情報を集め分析します。

つまり、そのスポーツやチームに関して詳しくないと予想が外れてしまうので、そのスポーツに対する関心が高まることから、スポーツ・ベッティングがスポーツ振興の目的も兼ねて解禁されているのです。

スポーツ・ベッティングが盛んなのがイギリスです。元は競馬のレース予想から始まり、1961年にブックメーカーに関する法律が整備されました。イギリス人が一般にスポーツで賭ける金額は、1か月に2,000円ほどと言われており、日常的に家庭の中で「ちょっと、うちのチームに賭けておくか」といったふうに、気軽な楽しみとなっています。

スポーツ・ベッティングには、現代だからこその社会的な意義や経済への貢献もあります。

現在、ブックメーカーのサービス対象は、スポーツの試合以外にも広がっています。アメリカ大統領選挙の結果予想や、イギリス総選挙の議席数といった分野もあります。

ブックメーカーが提供するサービスで自由に競争をすることで、より楽しい賭け対象を考えているのです。たとえば、アメリカ大統領選挙の結果予想だけでなく「新しい大統領が最初に外遊する国はどこか?」という予想となると、まるっきり政治分析の世界です。

いろいろな賭けを考えて、たくさんのサービスを提示し、多くの人が参加することで産業が拡大・活性化します。

▲ブックメーカーのサービス対象にはアメリカ大統領選挙も イメージ:PIXTA