NECのLAVIEや、富士通のFMVなど、ひと昔前は「世界に誇る」と言われていた日本の大企業も、中国資本の傘下になってしまっている。こうなると最も苦しむのが日本の労働者である。かつて、日本企業は中国人を「安い労働力」として利用していたが、2021年現在、その立場は逆転しようとしていると元内閣官房参与で京都大学大学院教授の藤井聡氏は警鐘を鳴らす。
※本記事は、藤井聡:著『日本を喰う中国 -「蝕む国」から身を守るための抗中論-』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
優秀な日本人労働者でも裕福にはなれない
東芝や三洋、レナウンやパイオニアが、今や日本企業ではなく、中国企業になっている。つまり、その企業の製品を買えば、かつては基本的に売上金が全て日本に戻ってきていたのだが、今では売上金の多く(場合によってはその大半)が、中国に流出していくことになってしまっている。
もちろん、それぞれの企業で働く人は、今のところ日本人が多く、したがって、売上金の一部は日本人への給料として戻ってはくる。しかし、彼等の給料を決めるのは、中国人の経営者であり、奴隷や社畜のように安い賃金にすることだってできる。そして、労働者に支払ったうえでも残る「儲かったお金」は、全て中国人のものとなる。
一方で、何十年、あるいは百年以上かけて培ってきた企業のノウハウや技術は、もちろん全て根こそぎ中国に奪い取られる。
つまり、中国に企業を買収されるということは、お金のみならず、技術もノウハウも全て中国に吸い上げられていくことを意味するのである。
こうなったとき、日本人の労働者や技術者が、どれだけ優秀でどれだけ懸命に働いても、さして裕福にはなれない。
そもそも資本家が、労働者が産み出した価値によって得た利益を吸い上げ続けるのが「資本主義」と呼ばれる仕組みだ。だから、労働者が搾取されるのも、資本主義の必然だと言うこともできるだろう。
しかし「社長と労働者が一心同体の家族」であるなら、社長は社員を大切にして、社員が満足する給料やボーナスをタップリと支払うこともあるだろう。そして、そんな社長に報いるべく、その社長のために、そして会社のために精一杯、社員たちも働くという信頼関係が取り結ばれることもあるだろう。
事実、それこそが「日本型経営」と呼ばれるものであり、昭和時代までは、我が国日本の殆どの企業がそうした経営を行い、それが我が国の高度成長やバブル景気を支えたのであった。
中国資本である限り日本人は「道具」にすぎない
しかし、中国が買収した会社では、そんな幸福な日本型経営が採用されることなどない。中国人経営者はそもそも、日本人や日本を愛するために日本企業を買収したのではなく、純然たる「カネ儲け」のために日本企業を買収したに過ぎない。
そのために投資した金額を回収し、さらにはより高い利益率で利益をたたき出すことをしか考えていない。
だからこそ、中国人に日本企業が買収されればされるほど、日本人の労働者が単なる「道具」と見なされ、搾取されるようになっていくのである。
誠に遺憾な話であるが、今や日本は、軍事的に侵略されてはいないとはいえ「経済的植民地」として、中国に実際的に搾取され続ける体制へと、徐々に移行しつつあるとも言える。
しかも、名だたる世界的な日本の一流企業の多くが、中国資本に買収されてしまっているという現実は、多くの国民にとっては「寝耳に水」のような話かも知れないが、残念ながらこれで終わりだということは絶対にならない。
中国は未だに膨張し続ける一方、日本は凋落の一途を辿っているのであり、今後さらに激しく、より多くの日本企業が中国に買い叩かれ続けることは、火を見るよりも明らかだ。
「このまま」の状態が続けば、日本は今後ますます中国に蝕まれ、事実上の経済的植民地として搾取され続けていくのは「約束された未来」なのである。