お笑いコンビ・かまいたちがMCを務めるTV番組『かまいたちの机上の空論城』(関西テレビ)。世の中にある「試したことはないが、やってみたらこうなる!…ハズ」という“机上の空論”を徹底検証する実験バラエティーに、犬のスペシャリスト・鹿野正顕氏が、“空論”の提唱者として出演されました。

その気になる“空論”は「大阪で1日犬探しロケをすれば飼い犬30種類は見つけられる!…ハズ」というもの。世界には700~800種の犬がいると言われているようなのですが(日本での登録は200種類ほど)、なかでも大阪はとくに珍しい犬種を飼う傾向が強い――という理由からの提唱だったようです。

まさかの大雨という、いちばん犬の散歩には適さない悪条件のなか、実験ロケを行ったのは人気急上昇中のコンビ・マユリカ。約38万頭の犬の登録(全国5位)がある大阪で、実験開始から10時間50分……見事に30種類を見つけてコンプリート!

マジ論を提唱した鹿野氏に、犬種からもわかる洋犬の役割と特徴について教えてもらいました。

家庭で飼われている9割がヨーロッパ産の洋犬

日本にも古くから犬がいましたが、現在日本の家庭で飼われている犬種のほとんどは洋犬、つまり多くはヨーロッパ産です。日本犬の占める割合は1割程度とされ、そのうちの8割以上が柴犬だといわれています。

▲家庭で飼われている日本犬のほとんどが柴犬 出典:YAMATO / PIXTA

かつては各地方ごとに特色をもった「地犬」がいましたが、多くは絶滅してしまいました。日本犬と呼ばれる在来種で代表的なものは、北海道犬・秋田犬・柴犬・甲斐犬・紀州犬・四国犬の6犬種で、固有種保存のため、いずれも1931年から1937年のあいだに国の天然記念物に指定されています。

日本犬が減ってしまった原因は、明治以降に大量に輸入された洋犬との交雑が進んだことと、太平洋戦争の激化とともに犬の飼育が禁じられ、毛皮などの供出のため大量に殺処分されたことが影響しています。戦後の食糧難(食用にされた)や、ジステンパー(犬伝染性肝炎)の流行なども在来犬種を激減させました。

現在の主流であるヨーロッパ産犬種の特徴は、狩猟民族であるヨーロッパ人が、犬の用途・目的に応じて人為的に改良を加えてきたことにあります。狩猟や牧畜の補助に、犬を使ってきたヨーロッパの歴史は非常に長く、近世以降は貴族階級の趣味のハンティングの用途に合わせて、犬種の改良が行われてきました。

それらは犬種の分類や名前にもくっきりと表れています。たとえば、ガンドッグ(鳥猟犬)という分類名は、カモやキジといった鳥類の猟をサポートする犬のグループを指しています。銃(ガン)を持ってハンティングする人の手伝いをする犬ということです。

このグループの犬種には、ジャーマン・ポインター、アイリッシュ・セッターのように、「~ポインター」「~セッター」「~スパニエル」「~レトリバー」など、なじみのある名前が付いています。これはそれぞれの役割に応じた名なのです。

  • 鳥を見つけたらハンターに獲物の位置を知らせる(ポイントする、セットする)
  • 隠れた鳥を匂いで見つけて羽ばたかせる(スパニエル=スペインの猟犬)
  • 撃ち落とされた鳥をすみやかに回収する(レトリーブ)

という具合に、それぞれの役割分担が、その名前からもわかるのです。

▲ジャーマン・ポインター 出典:galkinvladimir / PIXTA

また、テリアというのは「地面」というラテン語由来の名前で、イタチやアナグマ、ノネズミなど穴に暮らす害獣を狩る犬種に付けられる名前です。小型でも血気盛んなことが多く、当然、穴掘りも得意です。

ハウンドというのは、自分で獲物を仕留めることもする獣猟犬のことで、視覚で遠方の獲物を見つけて追走するサイト・ハウンド型と、獲物の匂いをどこまでも追って捕まえるセント・ハウンド型があります。いずれも獲物を探索し追跡するのが役割なので、スタミナがあり、かなりの運動量をこなします。飼う場合は人間にもタフな健脚ぶりが要求されます。

ほかにも、牧羊犬、使役犬など、犬に課せられていた本来の役割は、犬種の名前からほぼ見当をつけることができるのです。

※本記事は、鹿野正顕:著『犬にウケる飼い方』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。