怪物を覚醒させてしまった三沢のファイト 

▲90年9月の再戦では完膚なきまでに鶴田に叩き潰された

鶴田軍vs超世代軍の図式が出来上がり、三沢と鶴田の抗争は激化の一途を辿った。テリー・ゴディの病気によるタイトル返上後、新三冠王者になったスタン・ハンセンへの挑戦者決定戦として、9月1日の日本武道館で鶴田と三沢の85日ぶりのシングル再戦が決定した。

その前哨戦となった8月19日の後楽園ホールでのタッグマッチによる前哨戦(三沢&川田vs鶴田&渕)で、三沢の張り手で鶴田の左鼓膜が破れるアクシデント。怒った鶴田は試合そっちのけで三沢に襲いかかり、バックドロップ3連発で叩きのめした。

試合は、川田が渕の回転エビ固めを切り返して超世代軍の勝利になったが、控室に運びこまれた三沢はコメントができないほどの大ダメージを受けていたのである。「天龍さんですら、そこまで怒らせなかったのに三沢はそれをやってしまったね。俺でも止められなかったよ。試合は負けたけど“ジャンボ鶴田強し!”の印象が残ったよね」(渕)。

本番の9・1日本武道館のシングル対決でも、鶴田は怪物的な強さを発揮。20分過ぎの三沢のエルボー連打には、感情を露にして珍しくヘッドバットの乱れ打ちで対抗し、助走なしのドロップキックで吹っ飛ばす。三沢も踏ん張って必死にエルボーの連打で対抗して、さらにラリアットを狙うが……それよりも先にジャンボのラリアットがクリーンヒットした。

思わず「相打ち! ジャンボの勝ち!」と、絶叫する若林健治アナウンサー。当時、全日本の熱狂的ファンだったドラゴンゲートの横須賀ススムは、自分のラリアットを“ジャンボの勝ち!”と命名して、必殺技として使っている。

打ち勝った鶴田は、バックドロップから両手のクラッチを外さずにしっかりとフォール。バックドロップ・ホールドで完璧に三沢を仕留めたのである。ついに怪物が覚醒した。

「あの再戦では、鶴田さんが三沢を完璧に叩き潰したね。鶴田さんは、自分が教えた若い人間とガンガンできるってことで喜んでいたんじゃないかな、すごく。三沢は鶴田さんの付き人だったわけだしね。

鶴田さんはハンセンやブルーザー・ブロディとガンガンやってきたから、それに比べたら三沢たちはいくら伸び盛りとはいえ、やっぱりちょっと落ちるじゃない。だから鶴田さんぐらいのパワーがあったら、やりやすいっていうのがあったんじゃないかな。みんな受け身が巧いから、スラムなんかもバンバンやっていたし、バックドロップだってすごい角度でやっていたよね」(渕)

▲エルボーと同じく、フェースロックも鶴田をおおいに苦しめた