これまで以上に“趣味嗜好”が合う書店へ

――サイトの話に戻るんですが、トップページを自分で決められるのも良いですね。

吉田 ありがとうございます。それこそBLにしか興味がないユーザーさんとか、アダルトコミックにしか興味がないユーザーさんだとか、ユーザーさんによって違うと思うので、毎回共通のトップページに来てもらってから自分の好きな作品を探すのは、ワンステップ多いかなと考えて、自分の好きなところに直接アクセスできる導線づくりということで、トップページ指定をやっています。

――もう一つ、広告掲載中の作品が見えるのがいいですよね。作りも面白いので、ずっと見ていられます。広告から見えるトレンドはあったりしますか。

吉田 それで言うと、最近は“あるある”みたいな、共感を生む内容が人気の傾向にありますね。『トーキョーカモフラージュアワー』とか、バナークリエイティブが恋愛のあるある、みたいな小さい画像なんですけど、起承転結がある構成になっていて、Twitterとかで「何これ、めっちゃわかる」といった感じで紹介してもらったりしました。

▲『トーキョーカモフラージュアワー』(松本千秋/少年画報社)

吉田 それとは真逆で、すごく振り切ったファンタジー系も売れていて、それこそBLなんですけど、相手の心が読める人物がいて、相手は冷たいことを言ってるけど、“心の中では好きだと思っていること”がその人物にバレているみたいな、そういう作品が最近あるんですが、それは広告で出すとすごく押されますね。

――かわいいですね。

吉田 かわいいですよね、バレバレなのに、本人はバレていることがわからない。ハラハラせずに安心して読みたいっていうニーズがあるのかな、と社内でも話しています。

あとBLって気持ちのすれ違いで、くっつくのか・くっつかないのか、どうなっちゃうんだろうというハラハラドキドキみたいなものが流行っていたんですけど、それとは別で、気持ちが筒抜けで、もう絶対この二人ハッピーエンドだろうみたいな、読んでてわかってるけど、まだくっついてなくてモダモダしているみたいな、ある意味で安心して読めるみたいなものが最近、広告でも当たってるのかなと。

――世の中の不安、とかが反映されているのかも知れないですね。

吉田 そうですね。共感とか、安心して読みたいとか、想定外のことを起こして欲しくないみたいなものが、もしかしたらあるかもしれないですね。

――たしかに、あまり重いものは読みたくないです。

吉田 めちゃめちゃわかります。

――仕掛けて売れた本として『トーキョーカモフラージュアワー』がありましたが、あと個人的に推したい本が『A子さんの恋人』ですね。

吉田 日常系というか。「こういう会話、友達とするな」みたいなのが描かれていて、私は共感の視点ですごく好きだなって思って読んでいました。ただ、やっぱり女ならではのドラマチックな展開とかもあったりするので、ちょうどよくフィクションとノンフィクションを攻めてくれる感じがすごく好きですね。

▲『A子さんの恋人』(近藤聡乃/KADOKAWA)

――それでは最後に、いちばん力を入れて取り組んでいること、これから取り組みたいことをお聞きしたいのですが。

吉田 先ほどちょっとお話した「趣味嗜好が合うサイト」をこれからも広げていきたいですね。そもそも電子書店だと、中の人の顔があまり見えないって思うんですよね。リアル書店さんと違って、接客したり、お客さんと触れ合う機会もあまりないので、電子書店はどこも同じなんじゃないかと。だから、売れてるものを押し出していくだけだと、キャンペーンなどで差別化するにしても、ぱっと見、何を特徴として、何を持って選べばいいかわからないことがあると思うんです。

私の場合、先ほどもお話しましたけど、自分がユーザーだったときに「このサイトの運営さん、すごい趣味嗜好が合って頼りになるな」と思って、この書店だったら、また自分の好みの本を紹介してくれたりするかもと思って、Renta!で買っていた経緯があるので、キャンペーンをたくさんやってるお得なサイト、という特徴ではなくて、コンテンツに詳しい人ならではの趣味嗜好をもっと打ち出して、Renta!は「ちゃんとわかっているサイトだよ」っていうのを伝えていきたいと考えてます。

そういう意味で、スタッフの趣味嗜好をちゃんと打ち出せるような施策をやって、特色を作っていきたい、書店員の顔が見えるみたいなサイトになるのが理想だと思っています。

――吉田さんが入社される前からその傾向があったわけですから、やっぱり見えてたんでしょうね、最初からチラチラと。

吉田 これからも全出しじゃないですけど。もう本当にむき出しでユーザーさんに向きあっていきたいと思ってます。

――今回の記事がそのお手伝いになればいいんですが。

吉田 期待しております。自分の考えをユーザーさんに紹介するってことがないので、これを見て、ユーザーさんがプラスに思ってくれると、すごくありがたいなって思います。

――私もレビューの層がさらに厚くなるのを期待してます。ありがとうございました!


▲漫画、小説、雑誌などの電子書籍レンタルサイト「Renta!」