子どもと母親の強い関係は生命の根源
――例えば、左翼リベラル系の人からは「それは大家族制度への懐古主義だ」とか「子育て環境と子どもの問題行動に因果関係を示せ」というような声が聞こえてきそうです。
馬渕 昔から「子どもの情操は3歳までの育て方で決まる」とか、「どんな状況にあっても、3歳までは親元で育てよ」と言われていますが、これは経験則なのですね。言葉を替えれば「先人の知恵」です。
先日、ある新聞記事を読んでいたら、「3歳までは母親が育てるべきだ、という意見には科学的根拠がない」と書いてあったのですけど、科学的根拠なんて必要ないのです。そういう考え方自体が、実に唯物的発想だと思いますね。
例えば、赤ちゃんを100人ずつ二組に分けて、母親に育てられた組と、そうではない組の子の情緒や性格の比較データを出す実験を行うとか……科学的根拠を示せというのはそういう馬鹿げたことですよ。
そんなことをしなくたって、母親が子どもを育てるのが最良であることを、我々は本能的に知っているわけです。一つの真実としてね。答えは簡単なことです。我々は皆、母親から生まれているということなのです。
――真理と言ってもいいかもしれませんね。
馬渕 その真理がなかなか通じない。ひところDINKs(ディンクス)という言葉が流行りました。これはDouble Income No Kidsの略で、共働きで子どもをつくらない夫婦のことを言います。子どもに煩わされない、余分なお金と時間は趣味に使える、新しい夫婦のスタイルだ、ということで、随分ともてはやされたものです。
しかし、その夫婦に「あなたたちが今、生活をエンジョイできるのはどうしてですか? あなた方のご両親がDINKsを選択しなかったからですよ」と言えば、そこでDINKs理論なんて破綻してしまうわけです。
「産む、産まないは女性の権利」というのは私からすれば、間違った考え方です。堕胎は、この世に誕生する生命を奪うことです。人間は生命を奪うことはできるけれど、生命をつくり出すことはできない。
私たちの生命というのは、お父さん、お母さん、そしてさまざまな偶然が重なって授かったものです。偶然の結晶である生命を人為的に絶ってはいけない。それを我々は常識として持つべきなのです。