社会人野球も金属バットを使用していた時代

1年目のキャンプでは、早速一軍に選ばれました。

その頃の鮮烈な思い出があります。バッティング練習で打席に入ったのですが、打球がまったく飛ばなかったのです。芝生の境目までも行かない。そんな状態が何日間か続きました。

「都市対抗野球で大活躍した好打者」という触れ込みでプロに入ってきたはずなのに、高校野球でも、社会人野球でも毎日当たり前のようにやってきたマシン打撃や、バッティングピッチャーの打ちやすい球を打つことができないのです。

この想定外の事態には、さすがに顔面蒼白、頭はパニックになりました。

バッティングコーチに「もっとしっかり振り抜きなさい」と言われて、それを意識すると、ようやく少しずつ飛ぶようになってきました。

ひとつには緊張して体が動かなかったのもあるとは思いますが、それよりもスイングに問題があることが、だんだんわかってきました。

高校、社会人と金属バットで野球をやってきた弊害でした。当時はまだ社会人野球も金属バットの時代だったのです。

木製バットでボールを飛ばすには、バットをしならせてヘッドを走らせなければいけません。そのためには下半身でしっかり地面を踏みしめて、土台をどっしりさせなければいけない。

金属バットであれば、そこまでの踏ん張りがなくても、体をくるりと回してそれと一緒にバットも回してやればなんとかなりました。バットの硬さ、その反発力だけでボールを飛ばすことができました。いつの間にかそれに合ったスイングが、体に染み込んでしまっていたのです。

思えば、私がプロは下半身と体幹を鍛えなければ通用しない世界だと強く認識したのは、これが始まりだったのかもしれません。

その後、足腰の強化と、土台の踏ん張りを強く意識するスイングを繰り返すことで、「ボールがまったく飛ばない問題」は解決の方向に向かいました。