レギュラーシーズンだけでも年間143試合を行うプロ野球。中継映像の制作と販売が高木大成の主な仕事だが、チームに優勝の可能性が出てくると、8月頃に早くもあるイベントの準備が始まるという。

売り上げの大半が2月までに決定する

前回は、私が主に担当している中継映像の放送権ビジネスについてお話しましたが、今回はさらにイメージしやすいように、私が現在担当している仕事の年間スケジュールをお話しましょう。

■球団職員の世界 第6回

NPBにとってもっとも大きなイベントのひとつである日本シリーズの終わりを待って、すぐに来季の放送権関係のセールスがスタートします。各放送局のプロ野球放送予定は、だいたい2月までには決定します。つまり、私が関係する年間売り上げの大半は、11月から2月までで決まってしまうのです。

リレーション・メディアグループの事業は、営業部全体の予算のなかでも、売り上げ、利益ともにそれなりの割合を占めていますから、万一その予算が崩れてしまうと、球団全体に影響してしまいます。なので、その時期は選手時代のバッターボックス並みにプレッシャーがかかるといってもいいかもしれません。

11月、12月は各放送局を回ります。東京のテレビ局やラジオ局に加えて、北海道・仙台・福岡など地方のテレビ局にも出向き、1試合でも多く放送してもらえるよう営業をかけていく時期です。

それぞれの地域には、複数の放送局があります。多い地域では民放が5局ありますが、あまり詰め込みすぎのスケジュールにはしないようにしています。効率だけを重視しても、あまり結果につながりません。

2月までにほとんどの放送予定が決まるものの、シーズン途中で放送が増えるケースもあります。ペナントレースが白熱したり、注目選手の記録がかかる試合などでは、放送局で新たな予算が組めたりして、シーズン中に試合中継が追加されるのです。

その時に、私の顔を思い浮かべてもらって、「じゃあライオンズ戦にしよう」と思ってもらえるようにするのが私の仕事です。

2019年7月19日、400号本塁打を達成した中村剛也。こうした節目の記録が達成されそうな時期は放送局の注目度も高まる ©SEIBU Lions