大喜利を教えてくれたのも若林

二人でいるときに先輩から誘いの電話がかかってくることもよくあった。タダでメシを食わせてもらえるから、ラッキーと思うかもしれないが、やはり気を使うし、説教されることもある。

一番よく連絡をくれたのが前田健さんだった。ショーパブ終わりにメシに連れてってもらうことも多かったが、プライベートでもよく電話がかかってきてた。前健さんは乙女の心を持った人で、とても寂しがり屋。一人でいる時間が苦手だったようで、暇さえあれば俺か若林に電話をかけてきた。

コージーさんから誘ってもらったときも、微妙な空気になることが多かった。コージーさんではなく、取り巻き連中が面倒だったからだ。コージーさんがカラオケで歌ってるときに俺たち若手が喋ってると、「先輩が歌ってるのに後輩が盛り上げねーのかよー」と怒られるのだ。「俺たちはコージーさんの後輩で、オメーの後輩じゃねーんだよ!」と心の中で思いながら頭を下げていた。売れてない芸人=面白くないダメな奴だ、という扱いをされることが悔しかった。

先輩からのお誘いというのは有り難いことでもあるが、ある程度ギアを入れていかないとダメなのだ、と知ったのもこの頃。先輩には失礼だが、行ってもいいかなぁと思うときもあれば、元気がないからそういう気分じゃないなぁという日もある。若林といるときに先輩から電話がくると「前健さんからだ! どうします?」「今日はやめとこうか」と断ったこともあった。20年近く前の話だし、きっと笑ってくれるだろう。

若林は、ネタ作りの基本も知らない俺にいろいろなことを教えてくれた。なかでも思い出深いのが、「大喜利」を教えてくれたことだ。

若林 「この前、大喜利ライブがあって」

俺 「大喜利って何?」

若林  「TAIGAさん、大喜利知らないんですか?」

俺 「知らないよ」

若林 「例えば『人類が月に降りたらあった意外な物とは?』とかを答えるんですよ」

俺 「宇宙服とか?」

まさか大喜利を知らない芸人がいると思ってもいなかっただろう。若林は真顔で大喜利のルールを説明してくれる。

俺のトンチンカンな答えに「いや、そういうことじゃなくて……」とも言い切れなかったらしい。答える順番によっては、宇宙服もウケそうだなぁと思ってしまったようで、どうしたら俺に“大喜利の正しいあり方”を理解してもらえるのか相当悩んだらしい。このエピソードは、今でも二人の笑い話になっている。