「継続する技術」「集中」など、発表したアプリで数々の実績を残しているbondavi株式会社。代表取締役・戸田大介さんは、社会人として広告代理店に就職してから、自身の会社bondaviの立ち上げに踏み切ったという。なぜ、安定した生活を手放してアプリ開発の道に進むことができたのだろうか。自らを「凡人」と称する戸田さんに、アプリとの出会いから現在に至る道のりを聞いてみました。
カナダでの出会いからアプリ漬けの毎日
――大学では建築を学ばれていたそうですが、なぜアプリ開発を始めたんでしょうか?
戸田 1年間カナダに留学に行ったとき、建築系やIT系の人たちと数学の授業を一緒に受けることがあって、そこで仲良くなった人が「自分アプリ作ってるんだよね」って。世界中どこでも仕事できるし、カナダにいる人が作ったものを、日本の僕がダウンロードすることができる。「どこでも好きな場所で仕事ができるんだよ」と聞いて感動しちゃって。すごく自由だなあ、これやりたいなってなりました。
――そこからすぐにアプリ作りを?
戸田 はい。カナダにいるうちから始めました。でも、プログラミングが全くわからなくて。日本に帰ってから、周りにいた機械とかに強そうな人に「アプリ作れる?」って聞いて、「うーん、頑張ればできるよ」みたいな。「じゃあ頑張ってくれ!」って言って作ってもらったのが始まりです。とりあえず機械に強そうな人間を集めればできるに違いないと思って。
――初めて作ったのは、どんなアプリなんですか?
戸田 一番最初は“女の子がすごく褒めてくれる”アプリです。大学の友達にお願いして……。
――ええ!?(笑) 吹き込んでもらったんですか?
戸田 はい。声を吹き込んでくれる友達を集め、機械に強い友達を集め……。全部で500パターンぐらい録って、女の子は3人いてみたいな。血液型を聞かれて「O型だよ」って言うと、「O型かっこいい~!」って。
――めっちゃ面白そうですね……。それは収益化されてたんですか?
戸田 広告は載せていましたが、完全には収益化していなくて。そのときの目標は、このアプリの売上で打ち上げに行くことだったんです。
――反響はありましたか?
戸田 いきなり「ITメディア」さんに取り上げていただいて。僕は知らなかったんですけど。大きなメディアだったので、すごくいろんな人から「やりたくなった」って反響があって。
――アプリ作りを続けながら、就職されたわけですよね。就職先はパッと決められたんですか?
戸田 そうですね。なんかクリエイティブで楽しそうっていう、浅はかな理由で広告代理店に入社したんですけど。
――それでも入れてしまうのがすごいですね…! 広告代理店時代のことでアプリ開発に役立っていることはありますか?
戸田 私が広告代理店でやっていた仕事は、データ分析っていう専門性の高い仕事でした。入社して「君の仕事はデータ分析だ!」って言われただけのことなんですけど、データ分析ができなかったら、きっとこんなにアプリが伸びることもなかったと思います。
――データ分析ができるとどうなるんでしょう?
戸田 例えば、アプリを機能的にしたいときに、どういう数字がどう伸びるとユーザーは機能的に感じるのか、というところを数字で捉えられるようになります。
――広告代理店で働きながらアプリを作られてたんですよね。
戸田 はい。やっぱりアプリ開発があまりにも楽しくて、毎日早く起きてアプリ作ってから出社してたんですけど、広告代理店ってすごいハードワークなんですよね。毎日深夜まで仕事して……それが嫌で(笑)、アプリ開発をする時間もだんだん無くなっていったので、「これが続くなら会社を辞めます」って言ったんです。そうしたら、上司がすごくいい人で「戸田くんにだけ定時をつくるから会社に残らないか」と言ってくださったんです。
――それはいい上司ですね。
戸田 でも、僕は定時が17時だろうと思ってたんですけど、「18時を定時にする」って言われたときにすごい顔をしてしまって。上司からも「人間の口って、こんな曲がるんだ」って言われました(笑)。
――(笑)。思っていたのと1時間違ったから気に食わなかったんですね。それでも定時ができたわけですが、どうしてアプリ開発への道に?
戸田 アプリ開発が楽しいっていう気持ちが徐々に膨らんでいって。ある日、堰が切れたように「会社辞めよう!」って。急に訪れましたね。
――その上司の方にはどう伝えたんですか?
戸田 上司に「話があるんですけど……会社辞めたいんです」って言ったら、「だよね~」って。アプリ開発が好きっていう話はずっとしてたんで。
――いつかは辞めるだろうって気づいてたんですね。大きな会社を辞めて一人で仕事をしていくうえで、不安はありましたか?
戸田 ちょっと不安はあったんですけど、やっぱりアプリ開発をやりたい気持ちは強くて。なので、まずは自分が抱えている不安を明確にしようと思って、今後陥る最悪のケースを考えてみたら、それが思っているより最悪じゃなかったんです。
最悪のケースって、食べていけなくなって両親なり誰かから借金して、再就職して借金を返していくパターン。でも、そこまで悪くないなって。まだ若いから、いくらでもやり直せるし、そんなに痛手じゃない。もしかしたらうまくいくかもしれないし、少なくとも食えなくなるまでのあいだは、好きなことを100%できると思うと、いいことのほうが大きいんじゃないかなって。