国家の命運を外国に委ねるな! 独立国としての「フリーダム(freedom)」を、外国と官僚に依存した戦後体制によって奪われている日本。国際情勢や国内の諸問題を通じて、真の「フリーダム(freedom)」とは何か? 『日本は誰と戦ったのか』(ベストセラーズ)で第1回日本再興大賞を受賞、第20回正論新風賞を受賞した江崎道朗氏が日本再建の道はどこにあるのかを示す!
空自機の警告を無視する中国
これまでは外国の戦闘機に対して空自機がスクランブル発進し、「ここは日本の領空だ。入ってこないように」と警告すれば、外国の戦闘機も従ってくれていましたので、さほど大きな問題になってきていませんでした。
ところが、空自機の警告を無視する国が現れたのです。中国です。
中国はこの二十数年の間に防衛費をなんと40倍に増やし、いまや日本を上回る軍事力を持つ国となっています。その中国が「尖閣諸島は、中国のものだ」「沖縄は、日本のものではない」などと主張し、尖閣諸島や沖縄周辺に戦闘機や軍艦を出して、日本に対して軍事的挑発を繰り返してきています。
特に平成28年に入って中国の軍事的挑発は増え、中国軍機に対し、空自機がスクランブル発進した回数は、4~6月に過去最多の199回を数えました。
しかも元航空自衛隊航空支援集団司令官の織田邦男氏が「東シナ海で一触即発の危機、ついに中国が軍事行動」と題する次のような記事を公表したため、「場合によっては尖閣海域で日中戦争勃発か」ということで大騒ぎになりました。
《これまで中国軍戦闘機は東シナ海の一定ラインから南下しようとはせず、空自のスクランブル機に対しても、敵対行動を取ったことは一度もなかった。
だが今回、状況は一変した。中国海軍艦艇の挑戦的な行動に呼応するかのように、これまでのラインをやすやすと越えて南下し、空自スクランブル機に対し攻撃動作を仕かけてきたという。
攻撃動作を仕かけられた空自戦闘機は、いったんは防御機動でこれを回避したが、このままではドッグファイト(格闘戦)に巻き込まれ、不測の状態が生起しかねないと判断し、自己防御装置を使用しながら中国軍機によるミサイル攻撃を回避しつつ戦域から離脱したという。
筆者は戦闘機操縦者だったので、その深刻さはよく分かる。まさに間一髪だったと言えよう。冷戦期にもなかった対象国戦闘機による攻撃行動であり、空自創設以来初めての、実戦によるドッグファイトであった》(平成28年6月28日付 JBPress)
防衛省幹部も大筋でこうした事実関係を認めたと言われています。
ところが、当時の日本政府の萩生田光一官房副長官と防衛省の河野克俊統合幕僚長がこれを否定しました。
中国の戦闘機が空自機に攻撃動作を仕掛けてきたのに対して自衛隊が戦域から離脱したことが判明すれば、安倍政権は同盟国アメリカから「何という弱腰だ」と非難されることになります。
そこで官邸は、事実関係をもみ消そうとしたのでしょう。
しかし、中国の戦闘機と日々向かい合っている航空自衛隊としては、領空侵犯してくる中国の戦闘機が攻撃動作を仕掛けてきた場合、「戦域から離脱し、領空侵犯を容認するのか」、それとも「領空侵犯を阻止するため反撃するのか」、どちらかに日本政府の方針を決めてもらわないと困ると考えて、敢えて情報を漏らしたのではないかと思われます。
もし日本政府が「中国軍機が攻撃しようとしたら反撃せず、戦域から離脱し、領空侵犯を容認するよう」指示するとなれば、中国政府は「尖閣諸島は中国のものだ。その証拠に日本の自衛隊は、尖閣上空の領空侵犯に対してなんら対応しなかった」と主張するでしょう。
と言って日本政府としては、「領空侵犯をした中国の戦闘機は国際法に従って撃墜もやむなし」と指示するわけにもいかないのです。
※本記事は、江崎道朗:著『フリーダム 国家の命運を外国に委ねるな』(展転社刊)より、一部を抜粋編集したものです。