今春、吉本新喜劇のゼネラルマネジャー(GM)に就任した間寛平の発案で、全座員を対象に行われた「吉本新喜劇総選挙」。川畑泰史、すっちー、酒井藍など、座長を務める人気芸人をおさえて1位に輝いたのは、水玉れっぷう隊・アキ。

関東圏の人には、水玉れっぷう隊としての活動のほうが馴染みが深いかもしれないが、いまや吉本新喜劇の人気座員として、関西圏で絶大なる人気を誇っている。

そのアキに、吉本新喜劇総選挙1位の感想から、新喜劇に携わることになったきっかけや想い。そして先輩芸人からの忘れられない言葉や、水玉れっぷう隊としての活動などを聞いた。

▲アキ(水玉れっぷう隊)

やっとスタートラインに立てた

――「吉本新喜劇座員総選挙」1位おめでとうございます。

アキ ありがとうございます。やっとスタートラインに立てたなって感じです。

――え!? アキさんといえば新喜劇内でもすごい人気を誇っていて、今回の1位も納得の結果かと思っていたんですが、御本人はそうじゃないんですね。

アキ 正直、1位になれるなんて思ってなかったんです。新喜劇に出演し始めて8年ぐらいになるんですけど、僕なんか5位くらいには入れたらいいかなと思ってました。だから、驚いたのはもちろんですけど、これでやっとスタートラインに立てた、という気持ちを忘れちゃだめだなと。

――素晴らしいですね。先程も言った通り、関西圏では新喜劇に出演しているアキさんって、もはや日常だと思うんですけど、もしかしたら関東圏の方は、まだ「水玉れっぷう隊」としてのアキさんの印象が強いんじゃないかと思うんです。

アキ はい、そうだと思います。

――そもそも、新喜劇に携わることになったきっかけをお聞かせいただけますか?

アキ 大阪で10年活動して、東京に「ルミネtheよしもと」という劇場ができたタイミングで、水玉れっぷう隊としてコンビでネタの出番があったんですが、そこと並行して、今田(耕司)さんが座長の新喜劇、東野(幸治)さんが座長の新喜劇、木村(祐一)さんが座長の新喜劇、それぞれ出させてもらうようになって、“ああ、楽しいな”と思ったのがそもそものきっかけですね。それまで、団体で笑いを作って取っていく、という作業をしたことがなかったので。

――なるほど、新喜劇って特殊な舞台だと思ってるんです。ドカンとウケるお約束と、人情噺がうまく融合されていて、ほかのどの演劇にも似ていない。アキさんが新喜劇に魅力を感じたのは、どういうところなんでしょうか?

アキ コンビとしてやっていることと180度違ったところですね。水玉でやっているときは、とにかく新しいお笑い、こんなん見たことないなっていう笑いを、僕もケンも追いかけていたと思うんです。M-1もそういうことを追求する大会やと思っていて、まあ僕ら全然そういう賞レースは縁がなかったですけど(笑)。

――いえいえ(笑)。

アキ でも、新喜劇って新しいものを作っていく、ということと同時に、伝統も守っていかないといけない。今でも覚えているんですけど、ルミネで僕が新喜劇に出てるときに、僕が取り入れたことに対して、新喜劇に愛のある社員さんが「そんなのは新喜劇じゃない」ってズバッと言わはって。正直“そんなに全否定すんねや”って思いましたよ?(笑)。

――あはははは!(笑)

アキ でもね、それって愛があるからこその意見なんです。例えば歌舞伎でも、マンガの『ONE PIECE』とコラボしたりしますよね。それに対して、眉をひそめる人もいるけど、やっぱり新しいことも試していかないと広がりがない。僕の場合、認めてくれる方もいれば、見ないで毛嫌いする人もいる。見えない壁がたくさんあって……僕、考えすぎて「伝統」って文字を辞書で調べちゃいました(笑)。

――真面目ですね(笑)。

アキ でも、最終的には周りがわかってくれるだろうって。どんな世界でも、新しいことをしようとした人って叩かれる。悪口じゃなくて、それでいいと思うんです、そうやって伝統を守るし、うまくハマらなかったら淘汰されていく。ただ、こうやって新しいことに挑戦していく人がいないと、若い人から飽きられて、世の中からその表現自体が淘汰されてしまう。それを身に沁みて感じたのが、僕が東映にいたときの話なんです。

――そうですよね、そこで殺陣などを教わった。

アキ はい。そのときは、地上波のゴールデンから時代劇がなくなるなんて考えている人、1人もおらんかったんです。そりゃそうですよね、あの時代だとそれが普通です。でも、暴れん坊将軍も水戸黄門もゴールデンからはなくなってしまった。だから僕の中で考えたのは、魂だけを受け継ごうと。過去の方々の想いを胸に、新しいことをどんどんしていこうと。

――それがアキさんなりの伝統、そして新喜劇への向き合い方だったんですね。

アキ 新喜劇の時間には、笑いが当たり前のようにあって、そこに感動もあって、そこに新しいことを組み込んでやっていく。座長によってそれぞれの色があっていいと思うんです。ただ、周りから「アキの新喜劇はこういう色だよね」というのを言ってもらえるような新喜劇にしたいな、と思いました。