移民が創造性をもたらす理由
移民が創造性をもたらすのには明確な理由があります。
スタンフォード大学が天才児を35年にわたって調査した創造性に関する研究によれば、創造的な人々は物事を他人とは異なる方法で見たり理解したりするそうです。
また、発達心理学者であるナイジェル・バーバー博士の研究では、創造的な人は次のいずれかに当てはまる傾向があるというのです。
(1)移民
(2)同性愛者、男性的な女性、女性的な男性
(3)病弱
このなかで移民に焦点を当ててみると、移民は周囲の大多数とは育った背景や言語的背景が異なることから、さまざまな角度で物事を見たり考えたりするそうで、それが創造性につながっていると考えられています。
移民の創造性や、彼らによる多様性が社会に富をもたらしている代表例はシリコンバレーです。同地域では、2013年の四半期に前年比3.2%増の仕事が創出され、4万6665も仕事が増えました。これは過去10年間で最大の伸び率であり、製造業以外のすべての分野で雇用が拡大したのです。
シリコンバレーでは外国生まれの人が対全米比2.8倍であり、大卒以上の学位を持つ理系ワーカーの六割以上が外国生まれです。
カリフォルニア大学バークレー校のアナリー・サクセニアン教授は、1999年に発表した論文のなかで、シリコンバレーの科学技術系労働力の3分の1は移民であり、インドと中国出身の最高経営責任者がテクノロジー企業の四分の一を経営していると指摘しています。
1995年から2005年には、25.3%のテクノロジー企業の最高経営責任者もしくは技術最高責任者が外国生まれであることが判明しました。半導体業界ではその比率はさらに高く、35.2%のスタートアップが移民により創業されています。
アメリカでは過去20年の間に製造業の仕事は減り賃金も下がりましたが、金融、IT、クリエイティブ産業の仕事は増え賃金も上がり、富の多くを生み出しています。これらの産業が集中するのは、シリコンバレーのように移民が多く多様性のある町なのです。
移民による起業がその土地に富をもたらしているのはシリコンバレーだけの話ではありません。イギリスのシンクタンクであるCentre for Entrepreneursの調査によれば、イギリスには現在45万人の移民の起業家がおり、国内の企業の14%が移民による起業です。その比率はイギリス生まれの人の2倍以上であり、830万人のワーカーのうち、なんと116万人が移民により雇用されています。
イギリスの富の大半が生み出されるロンドンの金融、IT、クリエイティブ産業は移民によって支えられているといっても過言ではありません。金融街シティは本当に外国人だらけで、IT業界では八割近くの社員が外国人という企業も少なくないのです。
移民受け入れに対する認識が少しは変わったのではないでしょうか。
つまり将来、崩れかけた実家で認知症の親のオムツ交換に追われて一日を終えたくなければ、優秀な移民さまに来ていただく策を考えなさいということです。ただし、創造性を発揮している移民はおしなべて高学歴で働き者なので、そのような人々に来ていただく仕組みが必要となるでしょう。