いい意味で自分を諦める
私はといえば、前日は7時間しっかりと寝ていた。そして撮影翌日は、夕方からラジオが1本あっただけ。森田はそのまま朝から仕事に向かったらしい。それなのに、一緒のスケジュールの顔をして、二人で立ったまま寝ていた。
さらばのマネージャーはびっくりしただろう。
「え? なんでこいつも寝てるの? スタッフに俺も森田と同じくらい忙しいってアピールしてるやん」
めちゃくちゃ軽薄な人間だと思っているに違いない。でもそう思われたっていい。なんたって鈍感なんだから。どう思われたとしても、伝家の宝刀の真の芯の「そうっすね」を繰り出すだけなのだから。
ちなみに、後輩の森田の体力と気力に怖くなった翌日にネタを作ろうと意気込んだが、すぐに寝た。8時間寝た。私は子どもが騒ごうが、子どもに何をされても、どこでも3分あれば寝れる鈍感さも兼ね備えている。「どこでもすぐ寝れる」が若い頃は恥ずかしかったけど、この年齢になれば親に感謝するしかない。
もう受け入れるしかない。自分は愚鈍であると。
誰だって自分を愚鈍と思いたくないだろう。でもどう考えても愚鈍なんだ。40歳にして自分の愚鈍さに気づいてしまえば、これまで思い悩んでいたことがどうでもよくなる。そして、心も体も非常に軽やかになる。軽愚鈍だ。
かといってギャンブルはしない。酒もタバコも吸わない。キャバクラも女遊びもしない。そして借金もない。
軽愚鈍のくせに家族は大切にしたい。貯金したい。妻の機嫌を良くしたい。妻が毎晩呑む白ワインを注ぎたい。ヨガを習いたい。家族幸せYouTubeやりたい。でも風俗は行きたい。
どうです? なんて魅力のない芸人なんだろう。
かつて抱いた理想から遥か遠くても、先輩から怒られ後輩から嫌われても、私は愚鈍で生きていくしかない。
「そうっすね〜」と。
(構成:キンマサタカ)