『同志少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬
〇同志少女よ、敵を撃て|早川書房〇同志少女よ、敵を撃て
2022年本屋大賞受賞作。それ以上に、今なお続くロシアのウクライナ侵攻を想起せざるをえない本作。
実話を基にした、女性狙撃手が主人公の戦争小説。第二次世界大戦においてソビエト赤軍が数多く登用した女性狙撃手のなかでも、確認戦果309名射殺という女性スナイパー“リュドミラ・パヴリチェンコ”の回顧録が本作の土台となっている。
積み上げられた現実が背景となり、リアルで重厚感のある小説。主人公の少女“セラフィマ”が、戦場を通して“敵”という存在のアングルがいびつに変化していく様子が、なにより戦争がもつ終わることのない憎しみに天を仰ぐしかなかった。
『LISTEN 知性豊かで創造力がある人になれる』ケイト・マーフィ(著) / 篠田 真貴子(監訳) / 松丸さとみ(翻訳)
〇LISTEN 知性豊かで創造力がある人になれる|日経BP
自分だけではなく、今この時代に生きる誰しもが他者とのコミュニケーションに悩み、壁にぶち当たる瞬間がある。
「言いたいことが言えない」
「何て伝えたらいいかわからない」
「がんばって話したけど伝わってない気がする」
次は言い方を工夫しよう、タイミングを見計らおう、代わりにあの人に伝えてもらおうとか、少なくとも僕は考えたことがある。
会話には伝え方と受け取り方、両方必要であって。それなのに伝え方や話し方ばかりに意識を向けてしまう。でも、いちばん大事なことは「聞く」ということなんだと。そして「聞く」から「聴く」への昇華がスマートに書かれている。
『マイ・ウェイ-東京ダイナマイト ハチミツ二郎自伝―』ハチミツ二郎
巷に積まれているお笑い芸人の自伝ではない。
本書はひとりの男が淡々と紡ぐ郷愁と悔恨のブルース。
男の背中には四六時中といっていいほど死神が付きまとう。
死神は男の首元に鎌をチラつかせる。
実際に二度ほど鎌は首元を切り裂き男は倒れる。
絶命したと思われた男は何事もなかったように立ち上がる。
笑っているのか怒っているのか悲しんでいるのか狂っているのか
その瞳はあまりに細すぎて、男の本心は誰にもわからない。
ただ、男は今日もどこかの板の上から客を笑わすだけだ。