8年かけて準備してきたウクライナの防衛戦略
小川(陸) 資源をものすごく無駄に使っている可能性があるんです。ロシアはもしかしたら、もうちょっと効率的に少ない資源で戦争目的を達することができたかもしれない。一方、ウクライナは最初からものすごく少ない戦力です。でも、2014年のクリミア侵攻から8年間ぐらい準備していましたから、ある意味では、きわめて効率的に戦い続けてきているのではないかと思います。
物量の差で負けており、領土を取られてはいるのですが、ロシア軍に機動戦を一切許していないウクライナの防衛作戦の強さというのは、非常に評価できると思います。
桜林 2014年からの8年間というのは、ロシアにしてみれば、一つの成功体験からくる「チョロいものだろう」という感覚、ウクライナにしてみれば準備期間、ということになるでしょうか。
伊藤(海) ウクライナが準備しているということは、当然、ロシア軍も知っていましたよ。ゲラシモフ参謀総長とその下の将官たちは皆わかっている。8年前のダメダメのウクライナ軍と同じだと思って戦おうとするのは、軍人以外の人間のやることですよ。
桜林 そこに何か政治的な茶々が入ったということは、プロの目からは一目瞭然ということですね。
小川(陸) 2014年のクリミア侵攻は、ロシアから見れば成功したように見えるけれども、そのなかには「今後、ウクライナがこう変われば失敗の元になる」という教訓も含まれているわけですね。我々も日露戦争のときに、成功の中の失敗を学ばなかったことが後々ものすごく痛手になったわけです。
桜林 勝って兜(かぶと)の緒を締めなきゃいけなかった。
小川(陸) 勝利のときにこそ、成功の陰に隠れている失敗を徹底的に学ばなきゃいけないんですよね。