先輩の解散が教えてくれたこと
解散により、篠宮さんは私と同じ「コンビ解散→ピン芸人」という、ちょっと厄介な形になった。
なぜ厄介なのだろうか。
事務所にとっては、ピン芸人より、コンビのほうが扱いやすいからだ。
コンビだと賞レースに出れる。決められたルールと納期までにネタを仕上げないといけない。だからマネージャーも具体的なダメ出しをしやすい。
ネタ時間は2分から4分。とても大雑把に言えば、その時間に収まるネタを作りまくればいい。そして、それをかけるネタライブをすればいいし、賞レースで勝つという明確な目標も最初から設定されているからモチベーションも保ちやすい。
さて、私たちは?
そう、茨の道へ。
なんでもありの領域であるが、最近話題になっている新たな賞レースもエントリー条件が16年以上のコンビに限られる。即席ユニットも不可。
「売れる」という幻をどうにかして掴みに行こうとするが、どこに手を伸ばしていいかわからない状態である。
ここで自分を奮い立たせる。
もともと俺たち芸人はそうじゃないか。賞レースがない時代もあったはずだ。私と篠宮さんだけがM-1がない時代に戻ったと思えばいいんだ。
そう、私たちはお笑いフリースタイルを問われている。新しい笑いの開拓者なのだ。そんなことを思いながら、ステージのオープニングを飾る篠宮さんのピン芸を舞台の袖から見ていた。
すると、森脇健児さんがすぐ横にいることに気がついた。森脇さんは松竹の大先輩だが、そこまで話したことはなかったし、すれ違ったときに挨拶をさせてもらう程度の関係性である。そんな私に笑顔で話しかけてくれる森脇さん。
「最近、調子いいな〜。頑張ってるやん!」
「あ……ありがとうございます!」
「でもな、もうそろそろやめよか、事務所の悪口。な? もう限界やろ。そろそろやめよう」
私のお笑いフリースタイルの縦軸が奪われた。
しかし、めげることはできない。私たち芸人は「面白さ」と同じくらい「たくましさ」も備えなければならないのだから。
オジンオズボーンの解散は私に大切なことを教えてくれたのだ。
(構成:キンマサタカ)